『キル・ビルvol.1』

 はじめは『シービスケット』でも見ようかという事だったのだけど、最近やたら涙腺がゆるんでおり、それが馬関係となるともうだめだ。「拍手大歓声が湧き起こりますここピムリコ競馬場、本日のメーンはビッグ・タイトル、ピムリコスペシャル。出走馬は二頭、世紀のマッチ・レースであります。前年の三冠馬ウォーアドミラル、そして叩き上げの名牝、シービスケット――」なんて及川サトル口調でやられたらだめだ(多分及川は実況しない)。
 それはそうと『キル・ビル』。誰かの映画評で、「Vol.1となっているが、シリーズ物の一作目としての完結すらなく、単に上映時間の都合で切っただけで、評価しようがない」というようなのを読んだ覚えがある。そうか、それなら1と2揃ってから観ればいいや、などと思ってたけど、まあいいや。
 『キル・ビル』は予想以上に直球勝負の映画だった。もちろん変な日本は出てきたけど、いわゆる「変な日本が出てくる映画」の枠には収まらない代物。日本(映画)へのオマージュじゃなく、あくまで一部だし。で、完成されたのはもう、タランティーノ世界。映画には詳しくないので、「これの元ネタは…」なんてのは一切わからないけど、構成されたそれがステキだったので文句なしだ。
 あと、アクションの作り込みは流石だったな。こちらはホンコン・テイストだけど、日本刀を使った殺陣にも違和感がなかった。これは千葉真一が「刀を振り回す以前に、歩き方や座り方の所作から教えた」と言っていた(DVDのおまけインタビュー)が、だとしたらたいしたもの。あまり時代劇は観ないけれど、ここまで日本刀がギラギラかっこいい作品も見たことない。
 文句があるとすれば、日本語の台詞の聞き難さ。発音以前に、日本人俳優の台詞でも、音声として小さくて聞き取りにくかったのだ。これは、日本語字幕をつけてくれてもよかったんじゃないかな。