パリーグ・プレーオフ〜一球の運命論〜

goldhead2004-10-12

 野球と関係ない話から書く。私は先の台風の前日、スーパーマーケットに買い物に出かけた。すると、野菜の値段がいつもより高い。こんなとき私はただただうろたえてしまい、台風後にはもっと高くなるんじゃないかと考え、いくつかの品物を泣く泣く買ったのだ。どこにでもあるような、安月給のサラリーマン*1の悲哀である。ところが、台風の後にスーパーマーケットに行くと、なんてことはない、値段は元通り安くなってるじゃないですか。賢い主婦たちが、まとめ買いをしてる姿を見て、私はうなる思いをした。
 同じスーパーマーケットでも、ダイエーは野球と関係がある。リーグ優勝とリーグ一位では、たったの二文字でも北極と南極くらいの違いがある。それもこれも、今年から導入されたプレーオフのせいである。
 プレーオフ終戦、西武の先発は松坂大輔だった。松坂は日本球界のエースと呼ばれながら、優勝決定に弱い男と言われてきた。松坂は、そのたびに泥を食うような思いをしたのではないか。「俺だって甲子園の大舞台でノーヒットノーランをやってのけた男だ」と。
 そう、松坂は大舞台が似合いすぎるのだ。雌雄を決する天下分け目の戦い。敵の大将は大エース松坂となると、打者の血が燃えないわけがない。私のような世代から言えば、出てこいニミッツマッカーサーという気分である。しかしもしも、そこでマウンドに立っているのが、日本ハム高橋憲幸だったらどうなると思いますか?かったるそうにマウンドに登り、かったるそうな‘死神ボール’を投げてきたら。それこそプレーオフの秘密兵器じゃないですか。しかし、プレーオフファーストステージに高橋憲幸の姿はなかった。それはなぜか。高橋は今年の五月に自転車で転倒して顔面骨折をしてしまったのだ。プロ野球七十年の歴史の中で、チャリで顔面骨折して一シーズンを棒に振ったのは、この高橋憲幸しかいない。
 今、仕事をしているふりをしながらこの日記を付けている。すると、上司が「これから葉物野菜は高くなるぞ」というのが聞こえてきた。台風の後は、葉物野菜は病害虫にやられやすいというのだ。なんという発想であろうか。私は思わず腰を抜かしそうになった。わかる人にはちゃーんとわかっているのだ。
 男の人生にまことに得がたい物は、野菜の値段を予測できる上司である。そして、野菜の値段など、一週間後どころか明日どうなるかもわからない。男の人生もまた然りである。
 ……などと近藤唯之風に日記をつけてみたが、意外と時間を食ってしまった。一見真似しやすそうな‘近藤節’も実際にやってみると難しいものである。しかし、たまに‘近藤節’を書いてみようと思うのもまた、男の人生の妙薬なのか。

*1:本当は無職扱いです