がんばれライブドア、がんばれホリエモン

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041026-00000001-san-soci

プロ野球への新規参入を申請したライブドア(本社・東京)が、年内で廃止の予定になっている群馬県高崎競馬への経営参画を計画していることが二十五日、分かった。

 人は見かけによらない、という話を書く。ライブドア社の社長、堀江貴文プロ野球参入を目指した男である。窮地の球界を救う救世主として一躍注目を浴び、晴れて新球団のオーナーになる筈だったのだ。ところが、男の人生など一寸先もわからないものである。シャツ姿がだらしない、アダルトサイトを運営しているなど世間の非難を浴び、挙げ句の果てに楽天というライバルの出現である。世間なんて冷たいものだ。もはや堀江に向けられる目は、哀れみの目である。これがもし私だったら、オールド・パーをかっくらい、腹を出っぱらかして道ばたに転がっていたであろう。ところが、カネでいい女を釣るような男は、ちゃーんと考えているのだ。
 ご存じ堀江は競走馬を所有している。馬名は、自らのあだ名である「ホリエモン」だ。この名前を見たとき、私は震えるような思いをした。「自分の名を付けるとは、なんという執念だろう」と。そして、ホリエモンが一流の競走馬になるのではないかと思ったものだ。しかしながら、ふたを開けたらどうだろう、デビュー戦十着という結果である。ここで、堀江は堀江史に百年残る台詞を吐く。「惨敗じゃないですか」。このコメントを見て、私は腰を抜かすほど驚いた。自らの分身であるような馬の敗戦を、ここまで冷静に見られるものなのか、と。例えは古くなるが、もし二○三高地で死傷する兵士の姿を見て、乃木希典大将が「惨敗じゃないですか」と言ったらどうなったと思いますか。今ごろ私たちは毎日ボルシチを食う毎日です。ところが、流石最先端業界の異端児である。ここで堀江は競走馬の勝利よりも大きなことに気づいたのだ。「儲かるのは胴元じゃないですか」と。
 そう、プロ野球参入の夢を絶たれた男が、競馬に参入するというのである。それも、馬主ではなく胴元側としてだ。長い日本競馬の歴史で運営に名乗りをあげた金持ちは、この時の堀江ただ一人である。
 しかして、勝算はあるのか。参入自体の実現度は正直わかりかねる。しかし、運営に民間が適しているのは確かである。馬券に血道をあげる親父が、外れ馬券を破り捨ててビールを飲んで道ばたに転がってようが、競馬はレジャーでありエンターテインメントなのだ。それをサービス精神とは無縁な地方の役人にできると思いますか? たとえ情熱があっても、スキルがないのだと私は言いたい。官にできることは官に、民にできることは民に、それでいいじゃないですか。競馬の公正性を保つのは官、世間にアピールするのは民。まさに黄金の三遊間の完成である。
 それにしても、JRAは何をしているのか。私はJRAが世界ばかりに目を向ける現状を思うと、体中の血が沸きたつような思いをする。彼らが望むICSC(国際セリ名簿基準作成委員会)格付けパート1になったところで、足もとの馬産がボロボロになっていては元の木阿弥である。このような競馬界において、堀江が革命児としての面目を躍如することを望むばかりである。
 ところが、よく考えてみれば、別に金さえ出せば堀江じゃなくてもいいのだ。楽天でもソフトバンクでも参入を表明しないものだろうかと思い、そちらの方が安心できるなどと考えてしまうのだ。やはりピエロは、どこまでいってもピエロなのか。

追記:http://www.nikkansports.com/ns/horseracing/f-hr-tp0-041026-0011.html
ライブドア高崎競馬参入に「困る」

 存続を願うはずの調教師側にまで「困る」と言われる堀江。ピエロどころかドン・キホーテじゃないですか。頑張れ堀江、明日はどこへ行く。

 *[日記][関内]誰に知られてもならない
 今朝、男は三十分早く家を出た。普段より早い電車に乗り、関内の駅で降りた。そして、普段とは逆の方向、海の方へ歩み始めた。男は降るか降らないかの雨の中、赤い傘をさして歩いた。サングラス越しの景色は暗かった。男は、子ども多いな、と思った。横浜スタジアムの外で、合唱の練習をする制服姿の集団があった。社会科見学だろうか、数人のグループで地図を片手にちょこまかと歩く小学生の姿があった。
 関内は駅から遠ざかるにつれ、街が整然としてくる。いかにも古めかしい開港記念館や、威容を誇る横浜地裁がよく目立つ。そして、その先に男の目的地があった。横浜港郵便局、である。新しくできた地下鉄の日本大通り駅の向こうだ。男は慎重に歩を進めた。
 窓口は二階にある。エレベータを使って上がれ、とある。上がったところに「ゆうゆう窓口」があった。しかし、シャッターは閉まっている。「営業時間内は閉まっているのか」。男は一人ごちて自動ドアの中に入った。中はがらんとしていて、カウンターも単なる台だ。後ろの方の様子も丸見えになっている。男は郵便のカウンターが正面と確かめると、冷静を装うように近づいていった。
 「いらっしゃいませ」。制服を着た職員は言った。笑顔と接客には定評のある男である。「これが届いていたのですが」と、男は不在通知を差し出す。少々お待ち下さい、と職員は前の客の切手を処理すると、奥へ下がっていった。そのカウンターで、次の女性客と女性職員のやり取りが始まる。男は左のカウンターに移動した。
 すぐに職員は引き返してきた。「こちらになります。あの、何かご注文なさりました覚えは?」「ええ」「そうですか、では…」 手続きが始まる。本人確認のための免許証提示。代引き代金の支払い。受領印。そして、職員は免許証の番号の一部、四桁の数字を控える。手続きが終わると、男は踵を返し、早足で出口に向かう。その時、職員が「あっ」と声を上げた。男は一瞬振り返るが、そのまま自動ドアの外に出て、エスカレーターを降りる。信号の点滅する横断歩道を早足で渡る。鞄から荷物を出して、手に取る。思ったより軽いな、と男は思う。その荷物は何かって? 言わぬが花ってもんよククク。