寂しい山手の駅と精液の街

 昨夜、山手の駅のホームに降りますと、自分の息がちらりと白くなるのを見ました。続けて「ほーっ」と子どもがやるように息を吐くと、ふんわり薄いもやが流れていきました。今年は秋がなく、もう冬になってしまったようです。
 今朝のことです。関内の駅に降りますと、精液の饐えたようなにおいがします。この街は、ときおりそんなにおいがするのです。腐敗したさまざまな物が海に流れ着き、それを風が運んで来るのでしょうか。あるいは、石川町のホテル街のポリバケツの中から漂ってくるのかもしれません。この街では、精子も胎児もポリバケツに詰め込んでおけばいい。君や僕の精液くささも、海やホテル街のせいにしてしまえばいい。