深夜三時零分 所感

 とうとうこんな時間になってしまった。いつも静かな僕の住まいだけれど、深夜はおそろしいほどの静けさだ。遠く本牧の方だろうか、ときおりバイクの排気音が響いてくる。
 僕は中学に入った頃から、夜の住人だった。夕方に帰宅すると、すぐにベッドに直行して寝てしまうのだ。そして、夜中の零時になるとむっくりと目を覚まし、食事をする。それから、朝シャワーを浴び、学校に行くまでが僕の深夜だった。僕は本を読んだり、奇妙な深夜のテレビ番組や、俳優の顔を一人も知らぬ異国の映画に見入ったりした。海の方から聞こえてくる松籟ともなんともわからぬ音や、R134から聞こえる爆音に耳を澄ませたりした。そして、夜明けの、黎明のころの清冷な空気や空の色が好きだった。
 そして二〇〇五年一月十一日、久々の真夜中に僕はおののいた。待ち遠しかった夜明けが失われ、僕はまだ何者でもなく一人だ。今、隣の住人の、救いのような咳が響いた。三時十五分。僕のミネルバの梟は今飛び去った。