鶏皮

 僕は小さなころ、焼き鳥では鶏皮をやたら好んでいたらしい。「らしい」というのは、小さなころの記憶をあの忌まわしい事故で失ったから……などという理由があるわけでもない。気が付いたらあまり好きでなかった。しかし、母が「あんた好きだったでしょう」と、すすめてくることが多かったのだ。言われてみれば、皮がどうこうというより、甘辛いタレが他の焼き鳥よりたくさん味わえるのが好きだったのかもしれない。もっとも、それほどの気持ちでもないのに一度ばかし「おいしい」とか「好きだ」と言ったものを、親や親戚がしつこく覚えていて難儀する、なんていうのは、定番中の定番の話なのだけれど。
 そして、そんな鶏皮を、昨日スーパートップ山手店で購入した。一パック六十六円。価格的見地のみから臓物を好む自分だが、皮の方は初めてだ。いや、一度だけ味付けされて炒めるだけ、というのを買ったことがあったっけ。予想以上に油が出て難儀したものだ。そして、今回はお好み焼きの具にするつもりで購入である。もちろん、今でも鶏皮に魅力を感じていないのは確かだ。ただ、売場で僕の脳に「コラーゲン」と語りかけたのだ。僕はコラーゲンの効用をよく知らない(参考:http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1058033)。
 まず、電子レンジで加熱してしまうことにした。どのくらい火を通すかよくわからないものは、とりあえず加熱してしまう。そういう方針である。耐熱容器にパックの半分くらい皮を入れ、水で浸して加熱。一分だったかそこらで、もう食べられそうな感じ。試しにひとかけら食べてみると、ちゃんと加熱されているようだ。容器の中には油がたくさん出ていたけれど、水と一緒に捨ててしまった。一瞬「あ、コラーゲン」と思ったが、上のリンク先によると繊維の方が問題らしい。もっとも、焼いて食っていいのかどうかよくわからなかった。そもそも、僕はコラーゲンを摂取したいわけでもないのだ。
 あとは、普通にお好み焼きを焼くだけ。最初の面を焼いているときに、鶏皮を上に乗せる。生肉の場合と一緒だ。そして、クルッとひっくり返して焼き上がりを待つだけ。……なのだが、フライパンとお好み焼きの接地面からパンパン、バスバス音がする。「まあ、そういうこともあるさ」と気にしないで、皿の用意。そして、ちょっと裏面を見ていると、鶏皮は真っ黒になっていた。いや、それほど時間経っていないのに。
 というわけで、加熱した鶏皮は最初から生地に入れておいた方が良かったのかも知れない。それとも、お好み焼きに入れるべきではないのか。残り半分はどうしよう。そんなことを考えながら、思わず「鶏皮、鶏皮」とつぶやいた。そして、それを聞いた楊修が、僕の判断も聞かずに残りのパックをゴミ箱に……なんて話があるわけもない(参考:http://www.mizz.jp/word/word_26.html)。