不動産屋兼大家に泣きついてみた・2

  • 午後六時四十五分の電話(相手は年齢不詳の声の低い男性)
    • 私「はい、お電話代わりました」管「私××アパートを管理しています◎◎といいます」私「どうも、お世話になっております」管「お話をお聞きしまして、本人に連絡を取ろうとしたところ、取れなかったものですから、お母さんの方へ電話をしまして、今夜私の方へ電話を入れていただくよう連絡してもらいました。厳重に注意いたします」私「!?(話が早すぎる!詳しい事情とか、直接聞かなくていいのか!?)あ、あの、隣の部屋といいますと、階段と反対側の▲▲+1号室、ですよね?」管「はい▲▲+1号室です。それで、騒音の方は連続したものなんですか?それとも急に…」私「ええとですね、ちょっと隣の方の生活時間が分からないんですが、昨日の場合はですね、七時とか八時とかにも大音量が聞こえては来たんですが、私も起きていたんで、まあ、ちょっとは気になりましたが、その後、いったんやんで、私の方も一度寝たんですよ。それが、また深夜に凄い音が出て、時計を見たら二時半ぐらいだったんですけど、目が覚めてしまいまして」管「深夜というのは皆様お休みになる時間ですから、ええ。それで、そのような音、音楽ですか?」私「ええとですね、昨日の場合は音楽というより多分映画の音じゃないかと。あのギャーとか爆発する音とか、重低音みたいに響いてきて」管「重低音ですか」私「ええ、それで、他にも映画音楽が聞こえてくる場合ですとか、あの、アニメのルパン三世ですか、そういうのが台詞が分かるくらい聞こえてくるんですよ」管「わかりました。厳重に注意しておきますので」私「ありがとうございます。それであの、あまりそのトラブルにはなりたくないんで…」管「わかっております。匿名でやりますので」私「いや、そのそれでも多分わかってしまうので、その、深夜だけはさすがに困ってしまうので、よろしくお願いいたします」管「わかりました。失礼いたします」

 ……展開が早すぎて焦った。まずは反対方向の部屋と間違ってたらどうしようって焦った。多分間違いはないんだろうけど、いきなり向こうのお母さんってのはちょっと驚きだ。しかし、しっかり見たことはないけれど、どうにもそれほど若い奴じゃないんだよな、隣。いやはや。管理人の人にしてみれば慣れっこなのかもしれないけれど、そこまで話が進んでしまうか。ありがたいといえばありがたいけれど、これで正式にこちらから宣戦布告したも同様だしな。逆に、ここまで対応が早いと、前にもあったか、今回同様の話があったのかもしれない。そうだといいのだけれど。しかし、管理人の人は頼りがいがありそうで、上にメモした以上にいろいろと同情というか理解を示してくれて、相手に対して厳しい態度で望むぞって感じの話だった。うーんどうなることやら。とりあえず、通販でスタンガンでも買ってちっぽけなプライドでも取り戻すか?

  • 向こうがこないだこちらが壁を叩いたり怒鳴った件について過剰に反論してきた場合
    • 「ああ、そういうことを言っているんですか。いや、何せものすごい深夜の話で、こちらもその、やはり眠くなっていましたし、寝なきゃいけないというのもあるし、その、引っ越してからこういうトラブルになったのも初めてでして、どうしていいかわからなくて、そのちょっと、周りに迷惑だったら謝りたいんですけれど、ちょっとパニックになってしまったようなところもありまして。その向こうも大きな音だったんで、ちょっと大きな音じゃないと気づかれないとか、ちょっと寝ぼけていたというと変ですけれども、ちょっと熱くなったというか。その辺はもうその、あちらが深夜に大きな音さえ出さなければ、以後こういうことは絶対にありませんし、私の方としても静かな環境を気に入ってあそこに住ませてもらっているわけですから、ええ、どうぞよろしくお願いいたします」

 ……我ながらこれはちょっと先回りしすぎという気がするけれど、小人というのは得てしてこういうもの。で、想定外の自体に対応できない。それが小人物。しかしまあ、俺みたいに頭の悪いのは頭の中でもしゃもしゃ想像を巡らせるよりも、無理にでも目に見える文字にした方がまだ考えがまとまるというもの。脳の中は心と直結しすぎていて、思考の妨げが大きすぎる。文字には血も肉もないからいい。文字に血と肉があったら、積み重ねられた人類のもしゃもしゃの重みで、地球の底が抜けていただろう。