手袋を持つ手

 脱いだ手袋を持つ姿というのは、何か好もしい姿のように思える。凛とした風情がある。決然たる態度のように見える。西洋の風習では、手袋を投げつけるのが決闘を申し込む合図だったという。風習が先にあったのではなく、手袋を持つ手が先にあったのではなかろうか。相手に素手を晒すことは、鞘から刀を抜くことだ。しかし、一方で握手の際は手袋を脱ぐのがマナーだ。こちらは素手を晒すことが、腹を割る態度になる。馬上で鐙を外し友愛を示す武士の態度になる。ここまで書いて、話をどう持っていけばいいのかさっぱりわからない。考えなしに言の葉をまき散らしては、どんなに厚い手袋でも寒さは防げないということなのか。