『空のオルゴール』中島らも

ASIN:4101166412

 人間はアダムとイブから生まれ、モーゼは海を割った。チャールトン・ヘストンのように。

 俺は今まで中島らもの小説を、おそらく三作読んできて、クリーン・ヒットの三打数三安打だったのだが、これを借りて読んで打率が七割五分になった。率直に言って物足りなかった。
 マジシャン軍団対プロの殺し屋軍団。それぞれにギミックがあって、それが対決するわけだ。このアングルだけで面白そう。が、これが面白くなかった。戦いが噛み合ってなかった。というか、戦いにすらならないのだ。せっかくのアングルの意味がない。お前らちょっと男爵ディーノくらい見習えよ、みたいな。
 アフリカの内乱すら終熄させたという伝説の奇術師ロベール・ウーダンのエピソード。それだけでも面白そう。が、これも面白くなかった。何となく参考文献が引用されているくらいで、何も影を落としてこない。これもよくわからない。マジシャンを狙う連中やそのバックについても放ったらかし。
 まあ、とにかく残念だと思ったわけだ。あまりにも参考文献未消化な感じ。かといって、ルーズさと小ネタを楽しむにしても窮屈、どっちつかず。ロベールから広がる壮大なストーリーはいいから、せめてバトルがもっと充実していれば、それだけでも、とか。
 ……とか、くどくど言っても仕方ないか。そうだ、もう、仕方ないんだよなぁ。