『日本×画展(にほんガテン)!』横浜美術館

http://www.yaf.or.jp/yma/exhibition/2006/special/02_gaten/artist.html
 若沖(id:goldhead:20060717#p1)に続いて日本画続き。また誘われて出向いたわけだが、それほど乗り気ではなかった。馬券売場に行く地下道のポスターを見て「日本画だけだと客が来ないから、しりあがり寿で客寄せしとるな」と意地悪な感想を抱いたからだ。いや、美術館がたくさんのお客に興味を持つよう努力して何が悪い。だからといって印象派展やジブリ、手塚ばかりやられても困るが。
 というわけで、こういう試みはその中道として評価すべきなのかもしれない。お代は小一枚で、さっそくチン入。
 まずお出迎えは長い長い絵手紙がずらーっと連なってるやつにゃー。作者は藤井雷。まずは小手調べの先鋒作品かと思いきや、部屋の中に延々と連なってるの見て腰を抜かす。封筒サイズの一枚一枚の端と端がつながってるので、あっしはけっこうなハイスピードでぱらぱら漫画見るようにめくるめく観賞。すごく若い感じがするところあって、本当に若かった。でも、絵手紙とは別の東南アジアもののヘビのやつの海に抜ける感じとかすてきで、サイバーパンク金子光晴のマレー紀行ものなど少し思い浮かべたりしたのでありました。
 お次はしりあがり寿。『オレの王国、こんなにデカイよ』と題されたそれは正方形の一室四方八方ドーム状の天井まで張り巡らされた和紙にしりあがり絵がぶちまけられていてちょっと壮観であることは否めず、デザイン案スケッチには笑った。
 次に中村ケンゴ。挨拶文でくどくど何か書いていた。作品は、えーと、アパートの間取図をモンドリアンにしたのと、手塚漫画の登場人物の形を使ったやつがあった。
 そして、小瀬村真美。動画というのか、何かそういうデジタルでやったみたいなの。こう、雪の絵に雪降らしたりとか。雪の動きはたしかにさすがという感じだったですが、どうせならもっと先端技術でもっと美しい何かができるような気もしました。そのあたりがよくわからない。収蔵作品をモチーフに、描かれた遊女におそらく本人が扮して動画は森村泰昌のような趣向でしょうか。
 で、中上清。なんかこう、暗い中に光ってるやつで、画材がたしかアクリル絵の具だったと思う。置いてあったポストカードが全面的に青みがかっていて、ここまで色が違ってていいのかと心配になったけど、展示品とは違う作品なのかはすべて「Untitled」なのでわからず。
 その後、常設展。相変わらず渡辺幽香の『幼児図』(id:goldhead:20050613#p1)が存在感を示していて安心した。ショップの方でコレクションの解説を読んだら、1893年アメリカだかどこかだかの博覧会か何かに出展されたものだという。また、当時の富国強兵の雰囲気を表している、などと書かれており、なるほど、これを見た欧米人は腰を抜かして日本を警戒したに違いない、日本が負けたのはこの絵のせいだった!……などと下らぬ妄想をした。解説書は二冊あって、一つには風俗画とあり、もう一方には福島正則の幼児期を描いたものというが、それもどうでもいい。絵はがきがあったので買っておく。
 あと、他に、常設展の方に今までお目にかからなかったマグリットとか棺桶のあれとかあって、たまに行くもんだな、と思った。
 そんなわけで、まあ小一枚ならいいんじゃないの、とかいう感想でした。
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 翌日メールが来て気づいたのだけど、日本画展の方、まるまる一人の画家飛ばしていた。松井冬子という人の部屋。長い長い長い絵手紙が終わって、パッと目に入ったのがしりあがりの王国だったんだよ。そうか、まさかあそこで左に行かなきゃいけないとは。ああ、損した。千円のうち百数十円分損した。