がんばらない自炊くんロックンロール

がんばれ自炊くん! (文芸シリーズ)

がんばれ自炊くん! (文芸シリーズ)

  • 発売日: 2001/09/25
  • メディア: 単行本

 この本、ひとりぐらしを始めるにあたって、人からもらったもの。けど、ずうっと放っておいた。というのも、俺は早々とプロパンガス代に仰天し、料理の幅を限りなくミニマムにして、来る日も来る日もお好み焼きを焼きつづけたのだ。
 ほぼ日もよく知らない。俺はインターネットの暗い暗いところしか知らない。あるいは、逆にYahoo!とかしかしらない。こういうふうに中途半端に有名な、日の当たるサイトは、よく知らない。
 で、ひさびさにこの本を開いたのは、なんとなくお好み焼きの油に弱くなり(……テフロンを利用した無油お好み焼きにも挑戦しているが)、米とおかずが視野に入ってきたからだ。なにかヒントがあるんじゃないか、と。

 と、思ったわけだが、どうも読んでいて感情的になる自分がいる。「これだけの食材を要求しといて、なにが貧乏料理じゃ! お手軽料理じゃ!」とか「こんなに煮込み時間あって、どこが節約じゃ!」とか、まあそんなの。むろん、これは「自炊人」のためのものであって、「貧乏人」という設定はないわけである。ないわけであるが、貧乏人の自炊人からすると、全体的なテイストを通して「ゼイタクは安い」とか言われても、その「安い」にばかでかい×印つけたい気分なわけである。鰹節できちんと出汁とれ、だしの素は認めない、門前払いっちゅーが、いったい味噌汁にいくらかける気か、と。

 ……というわけで、憎しみも抱きつつ、味噌汁などに手を出している俺。そもそも、用もないのに不相応な13,800円の牛刀など買ってしまう俺。心の中の山岡さんの声に耳を傾け、小うるさくて、気取って、排他的な、そんな自炊野郎になる資格というか素質十二分。どっかでブレーキかけないと、雪平鍋、中華鍋、圧力鍋買っちまうぞ。料理のレパートリーミニマムなままで。