『アルフレッド・ウォリス −海に生きた素朴画家−』横須賀美術館

http://www.yokosuka-moa.jp/

ルフレッド・ウォリス

 アルフレッド・ウォリスの墓碑には「Artist & Mariner」と刻まれている。絵を描き始めたのは70歳。船具屋のオッサン。旅の若い画家が偶然飾ってあるのを発見した。絵はボール紙だとか、板だとか、あらゆるものに描かれる。壷やふいごにも描く。油絵。海の絵だ。船乗りとして、また、海の町に住むものとして、海の絵を描いた。テレビ東京の番組で知った。横須賀美術館には、次の澁澤龍彦で行くつもりだったが、こちらもどうしても見たくなった。
 絵丸出し、絵そのもの。アウトサイダー・アート、と言えるかもしれない。ヘンリー・ダーガーid:goldhead:20070702#p2)と何が一緒で何が違うのか。専門家でないのでわからない。ただ、脳内王国を表すために、雑誌写真のトレースからはじめたダーガーとは違って、絵を描くことの喜びがあるように思える、ウォリスには。俺の好きな海を描いてやろう、船を、帆船を描いてやろう。海の表情にはこだわりがある。船の舳先のあるフォルムには美学を感じる。遠近なんかは存在しない。あと、なぜか右上に全体が引きつるくせがある。
 プリントアウトされたものや、スキャニングされたものは、案外明るく見える。照明が暗すぎただけ、という可能性もあるが……、やはり作業者がちょっと明るくしてしまった、という可能性を取りたい。ウォリスの絵は暗い。暗いと言っても悲劇性があるとか、内面の恐怖を描いたとか、そういうものではない。イギリスの暗さ、曇り空そのままに、といった感じ。イギリス的曇り空。太陽なんてまるで描かれていないぜ。
 子どもの絵だって思う。分別や知識、下手な自意識が出る前の絵だ。「じゃあ、子どもの絵を飾ってるのと一緒なの?」と問われると、そうかもしれない。そうだけれども、子どもの絵にも大勢の人が唸るものと、そうでもないものもある。俺は、これは、唸る方だと思った。何かが違うが、何だかわからないが。抽象画やこういった絵について、「変わりに子どもの絵を」って思うこともある。でも、代わりのものをきちんと持ってこようとすると、そいつはかなりかなり骨の折れる仕事だと思うぜ。

横須賀美術館

 自家用車を持っていない人には行きにくい。いや、タクシーでもハイヤーでもレンタカーでもいいが、ともかく、電車とバスでは行きにくい。俺みたいのは、それで行くしかないが。京急浦賀駅に出て、そこから急行バス。いや、まあ、それほどでもないか。ただ、帰りのバスとかは少ないか。
 新しい美術館。目の前に海が広がってて、東京湾の内外へひっきりなしに大型船が行き来するのが見える。なかなかの眺め。その海の向こう、けっこう近い感じで陸が見えて、どこかと思ったら富津とかそっち、千葉だった。千葉ってこんなに近かったか、6km。

谷内六郎

 昔の週刊新潮の表紙絵の人だ。それ専用の館がある。ものすごく贅沢な作り(第二展示場のスペースが)。内容は、想像以上に面白い。週刊新潮みたいなメジャーな週刊誌の表紙が、こんなに闇を含んだ、シュールレアリスムなものだったというのは、ちょっと驚いていいかもしれない。もちろん、郷愁をかき立てられるようなテイストもあるが、それ以上に……。

レストラン

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 ACQUA MARE(アクアマーレ)というレストランが入っていた。外でお弁当という天気でもなく、周りに食うところもなく(観音崎自然博物館の横にも一つイタリアンがあるが)、ここへ。11時30分ごろに入ると、予約はあるのか聞かれるので、無いと答えると、お名前ちょうだいして30分後に、と。ショップなどで時間をつぶして12時ごろ店の前の待ち椅子に座っていると、お呼びがかかってちゃんと席に着けた。上のサイトの紹介でいきなり詫びから入ってるが、前はいろいろと修羅場があったのかもしれない。
 腹が減っていたので、3,800円のランチコースを。と、さらっと打つが、一食3,800円というのは、俺の中で昼も夜もなく破格の高さ。でも、まあ、たまにはいいじゃない、っと。で、まあ、こんなところか、というもの。4,000円の飯が500円の飯より確実に8倍美味かったら、生きていくのが辛くもなるが、それほど差が無いのであれば、200円も300円も変わらない、ということ。

常設展

 ……あんまり印象がないな。麻生三郎はどこでも暗い、とか。横浜美術館の方が面白いな。でも、ここは、市長室の前とかに飾りきれなくなったものをどうにかしようって美術館(って聞いたが)なので、今後に期待だろうか。