野次馬の馬脚、羊頭と狗肉

「だいじょうぶなのか」。殺虫剤が混入した中国製冷凍ギョーザによる被害が発覚して一夜明けた31日、各地の保健所などに不安の声が相次いで寄せられた。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080131k0000e040078000c.html

 ある商品についての疑問、ネットで公式サイトを隅から隅まで調べてもわからない。公式サイト以外を見てもわからない。そうなったらどうしますか。俺は、二度ほど質問メールを出したことがある。むろん、自分が買った商品について、お問い合わせフォームで要求される正しい身元も明かした上でだ。
 はじめて出してみたのは、天然ハーブ入りをうたうシャンプーについてだ。使っててふと思ったのだ。「何パーセントハーブ入ってんの? 5パー? 10パー? 50パー? あと、何パーセント入ってたら、“天然ハーブ入り”って表記できるとか、そういう法的基準もしくは業界基準、自主基準あんの?」という疑問。それで、公式サイト見ても、なーんも載ってない。製法みたいなのは書いてあるけど、どれだけ入ってるって一切なし。それでメールしたのだ。
 お返事には、「何パーセントとは言えねえけど、まあそんなに入ってねえよ。あと、基準はねえな」とあった。それ以来、「配合」表記だけのもんは、まあまったくその成分について期待はしなくなった。
 中国産についての疑問メールを出したこともある。麦茶だ。青いパッケージの大手メーカー製麦茶パック。これも、ふと気づいたらどこにも「国産」の二文字がない。ちょうど中国産の何かが問題になっていた夏だった。それで、メール出してみたのだ。「あのさ、パッケージにもホームページにも“どこ産”って表記ないけど、ひょっとして中国産? あと、“どこ産”って載せなくて、買う方が不安に思うとか考えねえの?」って。それで、「いや、書いてないけど、カナダ産、カナダ産、中国混じってねえから。あと、こっちは原材料に自信あるしよ、法律で書けって言われてねえから」とお返事。
 ……まあ、もちろん実際のメールの方は「御社の製品を長年愛用しているのですが、ひとつ疑問に思ったことがありメールいたします云々……」って調子ね、お互い。
 それで、案外企業ってのは正直に答えてくれるんだって印象を持ったんだっけな。でもって、今回の件。ちょうど、間の悪いことに、事件発覚の数日前に買った品物があったのだ。職場でのまとめ買いに便乗した通販、それで俺が選んだ「冷凍にらまんじゅう」。なんか中国っぽいメーカー名。普通にスーパーで買うときは、必ず確認するところだけど、カタログ見ながらワイワイ選んだので、なんにも考えてなかった。それで、職場の冷凍庫に入れっぱなしなんだけど、ニュース聞いた後、引っ張り出して隅から隅まで見ても、製造国書いてねえの。えー、マジ? むしろ中国産って書いてあった方がスッキリするー(……スッキリはするが、どうするかについてはひどく悩むだろう。むろん、いきなり健康被害が出ることはおそれない。ただ、なんとなく気乗りしないまま食うことがおもしろくないのだ。でも、棄てるというのも死ぬほど気乗りしないのだ)。
 というわけで、あんまり何か世間のパニックブームに乗ってわめいたりするのも嫌だけど、これは消費者の正当な疑問であって、ここで問い合わせることがクレーマー的ではないよな、と思って、「先日、御社の製品を購入した者ですが……、昨今の中国産に対する報道などを見ていて……、つきましては、生産国について……おねがいいたします」ってメール出してみようって。
 と、思ったら、ウェブサイトで先手を打たれていたわ。別に悪いことではないので引用しよう。大龍というメーカーだ。

当店の商品は、裏面の一括表示で「原産国」と表示が無いものは国内で製造しております。

http://www.dairyu.net/company/item_info.htm

 ほう、「製造」は国内か。「製造」が国内なら、俺基準セーフだわ。「原材料の原産国」までは問わないよ。だいたい、今日の昼だって中国産やめねえ宣言したゼンショーグループで昼飯食ったしさ、そこまでは意固地になってねえから。
 まあ、意固地になってないって表明する時点で、いくらかバイアスがかかっていることは否めない。でも、「中国産が悪い悪いと言うが、データを見て検証してから言うべきだ」みたいな物言いは阿呆だと思う(昨夜のTBSラジオ、アクセスの後、ジャンクの前の番組で言ってた)。検査機器やセンサーが飯を食うわけじゃあないのだ。心と感情のある人間が飯を食うのだ。食べ物から感じるのは、舌の上の味だけだろうか? 成分に対する生体の反応だけだろうか? 俺は違うと思う。ゆえに、食品は物自体の安全性の上に、さらにイメージや印象までマネジメントしていかなければいけないのだ。人はものを食わざるを得ないという絶対的な需要の上にあって、風評=実体とも言えるリスク、むずかしい商売と思う。