安田記念2008

 府中本町のコンビニでふと思いついた。メモ帳を買おう、ちいさなメモ帳を買おうと。メモ帳を買って、レースごとに一着から三着までの馬の父と母父の名前をメモしていこう。芝とダートでページを分けよう。太い赤ペンなどではなく、細い水性ボールペンで書き込んでいこう。親切なだれかがまとめてくれた表ではだめなんだ。自分で書かなければ覚えられない。日能研でそう習ったはずだった。
 それが奏功したのかどうかはわからない。ただ、自分としては、なんとなく傾向がわかった、わかったとはいわないが、何かあるように思えた。また、「ともかく内側を先行できればいいんじゃね?」的な割り切りもできた。
 土曜日は200円浮いた。そして日曜日は1900円浮いた。博打としてはあまりにも割が合わない。諸経費をさっ引いたらマイナスだ。しかし、考えて、買った。考えたという手応えはある。そして、その間に1000000円とは言わないが100000円へのチャレンジくらいは含まれているのだから、無意味ではないはずだ。買い方が下手なのはかわらない。しかし、どうにかなるんじゃないか、光明が見えた。
 ……などというのは大抵大嘘で、来週にはノーホーラで沈んでいるのも毎度のこと。週刊Gallopの藤代三郎の連載の、馬券に対する賽の河原のような繰り返しの、まさにあの、多くの競馬ファンが陥る無間地獄のワンセンテンスにすぎないのだ。そんなことお前に言われなくてもわかっとる。でも、もっと昔、競馬をはじめたころ、ぼんやりとわかっていたような、種牡馬のイメージが少しずつ手に入ってきたような、そんな気はするのだ。
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 安田記念ハイアーゲームで行こうとぼんやり思っていて、当日昼過ぎてもそれは変わらなかった。が、パドックの映像を見てウオッカに驚いた。馬体の良し悪しで馬券を当てた思い出はないけれど、あまりに良く見えたのだ。井崎脩五郎絶賛にもうなづける。いっそのこと、ウオッカ本命に切り替えるか……。まだ、これができない。出した結論は、ハイアーゲーム複勝と三連複に突っ込む分を、ハイアーゲームウオッカのワイドに集中させるという作戦。あとはハイアーゲーム単勝と、ハイアーゲームからのワイド。ただし、ほんのちょっとだけ、ウオッカ単勝を買った。「この曖昧なメンバーで、このウオッカが勝てないなんてあるだろうか?」という運試し。いや、そんなに思うならウオッカからの馬券にすればいいのに。
 結果、今の東京のパターンであるインから先行でいとも鮮やかに勝ちきった。やはり東京は走る。ヴィクトリアマイルは体調面と、あるいは流れの向き不向きみたいな面があったのかもしれない。そのあたりはわからないが、絶対能力の高さは疑いようもない。今後のローテはわからないが、秋天ジャパンカップと内弁慶でかまわないと思う。
 しかし、わざわざ自らの大抜けを、ダービーでディープスカイ抜けのことを引き合いに出して、今回かなりひいきのウオッカを無印にした清水成駿、大丈夫だろうか。心配だ。
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 あとは、思い出だけが性感帯ということで、土日でよかったところだけメモする。悪いことはきれいさっぱり忘れても、自分のいいパターンを覚えておく。すると、それを取り巻く状況も覚えられるのではないか。亀谷さんの言うとおり、競馬は似たようなことが繰り返されるのだ。自分の結果論にすがるのもいいはずだ。たとえもっとわかっている人から見たら、単なる偶然に過ぎない大間違いの見当だとしても(能力値とされるものが高い馬が負け、低い馬が勝つ馬場傾向があるように、予想力の低い人間が偶然勝てる傾向の日などもあるのかもしれない)。

 土曜一レース。東京のダートの千六は欧州型の瞬発力とスタミナがものをいうとか亀谷の新刊に。芝っぽいところか、ということで、母父サンデーサイレンスのトーホウロサードの複勝を仕込んだら来てた。

 ひいきのハイカックウが断然の人気も、勝ちきれない馬という印象もあって本命エアワルツ。後藤の早めの仕掛けで抜け出せないかという狙い。結果ハイカックウが地力の違いを見せつけたが、馬連は当然もらった。三着トキノプリンセスも押さえていて、ここはワイドの方がよかったか。いや、三連複……とやりだすときりがない。

 地方から出戻りのマンハッタンカフェ産駒アーバニティ。手元の新聞では印が少ないが、枠も内側でこれはいけるんじゃないかと見当をつける。が、蓋を開けてみれば一番人気、二番人気級。逆に面白くないのではないかと思う。だったら内枠から粘り込めそうなバブルガムフェロー産駒のカウントオンミー、キャプテンスティーヴ産駒のカピターノ、そしてラジオで水上学が推すソングバードあたりはどうか。ダンスインザダークは千四向きのはず。して、単勝でカウントオンミーとソングバード、そしてアーバニティ入れたワイドのボックス。八枠から一、二枠への枠連……という買い散らかし方。結果アーバニティが真価を発揮。終わった瞬間はトリガミかと思っ
 
……疲れたのでここでやめる。考えたら、負けたレースの結果、かすった結果などからも何かえるものがあったはずで、その流れがあってのことで、いいことだけ思い出しても片手落ちだ。そうだな、なんか言葉ではなく、なんとなくぼんやりと覚えておこう。