人間よ、人間の同胞よ

 人間が人間を試すということ、とくにその魂を試すということは、人間が人間として生きるなかで、するべきではないことではないでしょうか。神ならざる人間が、同じ人間の魂をはかってはいけない。その人の魂を見るのに、あえて魂を晒させるようなことをしてはならない。違いますでしょうか。
 ああ、人間よ、人間の同胞よ、私は人間の名においてここに告白する。私はその罪を犯した。愚か者の私が、こともあろうに人の善なるか悪なるかをはかろうとしてしまった。あえてしなくてもいいことをしてしまった。ああ、人間よ、人間の同胞よ、私が犯した罪を聞くがいい。聞こえる耳あるならば人類の罪を聞け、盲いていなければ刮目して見よ……!
 この私はオフィスグリコの代金回収のカエルの口に、100円多く入れた! 入れてみて、回収のおねえちゃんの反応を試した!
 天使が啓示を与えてくれたのでも、悪魔が私の耳にささやいたのでもない。私の狂おしいほど愚かしい魂の業。その業が、人の魂を試させた。煉獄に焼かれるのは私の魂だ。私は雲上にいるつもりになって、進んで地の底に堕ちた! そうだ、100円は返ってこなかった! この私の業が、よからぬおもいつきが、その誰かに罪を犯させてしまったのだ! この私の傲慢が、罪人を作った! 私が私の業によって私を罪人にするよりも重い、ボスポラス海峡より東の全ての金剛石を積みかさねたものより重い、重力の穴引き込まれるほどの罪! 罪だ、罪だ、罪だ! 悪だ、悪だ、悪だ! ああ、この私が人間の顔をして今朝起きて、人間の顔をして人々の間を歩き、人間の顔をして人語を発することの恐ろしさ! 気づくがいい、ここにいるのは一匹の獣、天啓の糸を自ら断ち切った地を這う生き物だ! 人間よ、人間の同胞よ、人間はここまで堕ちるのだ! そしてなお私は人語を発する! 人間の顔をする! ああ、人間よ、人間の同胞よ、隣人を疑うがいい、家族を疑うがいい。
 そして人間よ、人間の同胞よ、自らの魂は自らはかれ、そして裁け! 魂はそのようにしてのみはかられる。そのようにしてのみ裁かれねばならない。
………

 置き菓子ビジネスの火付け役といわれているのが江崎グリコの「オフィスグリコ」。BOXを設置する費用は不要、商品はすべて1個100円、商品を取り出すときにお金を入れるというもので、1週間に1回程度サービススタッフが商品の入れ替えや代金の回収を行うシステムとなっている。代金の回収率は95%、未回収分はほとんどが入れ忘れだという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080610-00000003-dol-bus_all

 ……あれ、なんだよ未回収分って。ひょっとして、回収したその場で「今日は品物が五個減ってるから、五百円」とか数えてるわけじゃねえの? そういや、もっとでけえ大人数のオフィスだったら、売り上げ数もすげえよな。つーか、なんかまあ、どんぶりとは言わねえけど、ある程度ざっくり回収してるわけ? つーと、例えば俺の百円もこのオフィスかどっかのオフィスのうっかりさんの入れ忘れ補填してたりしたかもしんねーの? あれ、俺ってすげえ善行してんじゃん。来世に希望が出てきたぜ!