音楽のための雨の日

 どうも六月から自転車に乗りながらのヘッドホン、イヤホンによる音楽鑑賞というのは禁止になったようだ。ようだ……、ここらあたり、「交通の方法に関する教則」なるものの位置づけや、果たして神奈川県の条例ではどうなっているのか(県警のサイト見ても、まだ触れていない)、正直わからん。わからんが、まあともかくヘッドホンあかんということのよう。
 そして、遵法精神溢れる俺は、当然五月いっぱいで自転車通勤中の音楽をやめた。やめて一ヶ月経つ……というのは嘘で、どこが嘘かと言えば「遵法精神溢れる」のところであって、溢れるほどは持っていない。蓋を開けて横にすれば出てくるかもしれない。まあともかく、どちらかといえば「恥ずかしい」の気持ちが大きい。この流れを「あいつ、知らないんだ」と思われるのが嫌だ、それが大きい。あと、警官に呼び止められてなんか言われたら、向こう二ヶ月は凹むので、そのリスクも拒否する。これらをひっくるめて遵法精神というのかどうか、俺は知らない。
 そういうわけで、俺は雨の日に、歩いて通勤する日以外の音楽を失った。欲しいCDもいくつかあるが、「いつ聴くのだ?」というところがあって、買える値段の中古であっても買わない。これはかなりの変革だ。俺の所持するCD数が、果たして世間の平均に対してどのくらいかというとよくわからないが、少なくとも「音楽CDを進んで買わない」という気持ちになったのは初めてだ。買えない、ではなく買わない。何もCDに限らず、ダウンロード販売だろうとなんだろうと同じ事。いくら梅雨時でも、そんなに雨は降ってくれないのだ。
 ……と、別に部屋で聴けばいいじゃないか。というのも考えた。が、どうもそのイメージもわかない。以前、自分の部屋で音楽を聴く機械がないことに気づき、ポータブルCDプレイヤーなど買ってみたこともあったが、ほとんど出番はない。もう長いこと、「移動中に聴くもの」というところで固定されていたようだ。それでもって、自転車と音楽を比べたら、やはり自転車の利便性+楽しさの方が、音楽を上回ってしまう。このあたりの価値観、今後どうなるか自分を観察していこう。