浜風に乗ってTUBEの歌声が聞こえてくる

 たとえるならば、深夜のスナックから漏れ聞こえてくる大音量のカラオケのように。いや、カラオケとは規模が違う、舞台が横浜スタジアムだ。TUBEオンステージだ。夏と言えばTUBEだけれども、今日は秋のように涼しい。雨も降っている。それでもTUBEは歌う。夏だからだ。スタジアムの外までどっかで聞いたような夏の歌を流してくれる。夏だものな。……あれ、いったい誰だ、夏はTUBEって言い出したやつ。おい、いつからあのTUBEってのは夏になるとしゃしゃり出てくるようになった? TUBEってどっから出てきたんだ? 覚えてるか? ある夏突然、日本中の日本人の脳に「TUBEって夏しか出てないよね(笑)」って、偽りの記憶を植えつけられたんじゃあないのか? ほら、言ってみろ、TUBEってどんな曲でデビューした? どんなステップを踏んで今の位置にいる? いきなり、ビールのCMのテーマになっていたんじゃないのか? それも、「やっぱりTUBEだから」って、初めてのことなのに、もう当たり前のように、ある夏の日に、突然、夏といえば……って。
 今、急にスタジアムの音が途絶えた。世界の本当の姿に気づいてしまった人間の末路がどういうものか、僕にはよくわかっている。でも、願はくは、偽りの記憶を植えつけられたあなたに、この文がとどk