株のコロッケ半額シール

 え、株ですか? そりゃあもう、俺はプチ株主様だから、資本主義の酸いも甘いも知り抜いた男ですよ? 郵便局員に小銭投げつけられますよ? え、一日で何兆円も市場から消えたっていうけど、その分、誰が儲けてるかって? えー、えーとですね、そうだ、そこにコロッケがある。惣菜コーナーのコロッケ5個入り、もう8時40分だから半額シールが貼られているわけです。元は300円くらいだから、今は150円になった。ほら、150円消えたのに誰も儲けてないでしょ。スーパーの利益は減っていると。それで、その分、定価の300円で買った奴の、心の中の150円が消えたわけです。心の中の150円は誰の得にもなってない。いや、150円で買うやつは150円得した気持ちになっているけれども、それも心の中にすぎない。それでその、コロッケは当然時間経過とともに劣化しているけれども、150円で買ったやつが300円の価値があると思ってたら、それはもう勝ちです。最低でも150円の価値があれば負けじゃあない。風で旗が揺れているのを見て、「旗が動いている」、いや「風が動いている」って言い合ってるところに、さらに偉い坊さんが来て、「旗が動いているのでもない、風が動いてるのもない、お前らの心が動いているのだ」って言うじゃないですか。でも、実際、ましてや心が動かしているわけでもないんですよ。わかりますか?
 え、コロッケは食ったら終わりだって? いや、株の場合は、これは食べられない。尻を拭いてもしゃあない。株のコロッケは、まあ、いきなりどんどん鮮度がよくなって、熱々サクサクになったりして、「それなら400円で買うか」って奴がいたりしたら、それで150円で買ったやつが400円で売れたりするわけですよ。あれ、中に松阪牛の肉が一頭分入ってた、とかになったら、1500円くらいで売れたりするわけですよ。
 で、その、コロッケの美味さというか、中身が、ほら、あの、会社の、企業の実態というわけです。これだけ売り上げるから、こんだけ美味いコロッケだろう、とか、土地をたくさん持っている、なんか金塊入りのコロッケだ、とか。でも、そのあたりは、その、うわさ話とか、なんか公開される資料とか、まあ馬柱と一緒で見る人によって違ってきて、いくらのコロッケかってところで、わいのわいのやって、売ったり買ったりする、その浅ましい惣菜売り場が株式市場なのですよ、ね、ね。
 え、スーパーはなんだって? それは、その、売る企業で、最初に売ったお金で、人をやとったり、設備投資したりするんじゃないですかね。えと、だから、たぶん、後で客同士がコロッケを売ったり買ったりするのにあんまり関係ない。だけど、たぶん、自社株? みたいなので、コロッケの在庫があったりすると、なんかそれが高くなったりしていると、まあ貯金たくさんあるみたいな。うん、そうです、そうそう。それで、なんかコロッケの評判が悪くなったら、「おい、マジでそんな安くていいの? じゃあ俺買うよ」ってやって、みんなが「あれ? ひょっとしてこれいいコロッケなんじゃねえの?」って思わせたりするみてえな。
 まあ、ともかく、そういうわけで、何兆円消えたのも、みんなの心の中のお金が消えたわけです。安くなる前にコロッケ売った人にしたって、それで何兆円になったわけじゃなくって、やっぱり最初にコロッケ買ったお金と、売った額の差額であって、そりゃあ、一番安いときに買って、一番高いときに売れば大儲けだけど、一気の暴落で何兆円分儲けたやつはいないって、たぶん、きっと、おそらく、一応、そういうもんです。で、株のコロッケは永遠に食われることなく、熱くなったり冷めたりしながら、まあ、会社がなくならない限り買われたり売られたりするんです。決着がつくのは56億7千万年後です、それが株の満期です。馬券は武が落馬したら一瞬です。ええ、俺はもう、日能研の150点満点の算数で5点を取ったことのある男ですから、たぶん間違ってない。ほら、もう閉店だ。帰りましょう。
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 ……などという会話をしたのを、question:1227798812←この質問を見て思いだした。合ってるかどうかはさっぱりわからない。俺が喋ってるんじゃない、口が喋ってるんだ。寸借詐欺師か、俺は。しかしなんだ、食えないコロッケやチューリップの球根に、大の大人が命を賭けますか? いや、配当金とかいうのがあるんかな? まあ、ええことよ。おしまい。
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  • あおば20時45分の激闘〜おっさんvs経済……この「どうせ捨てるんだから、半額シール貼れよ!」のオッサンは、「どうでそれはクズ株だから、100円で売れ!」みたいな感じだろか。ようわからん。