すき家の復讐〜アタック・オブ・豚とろ角煮丼〜

 すき家の社員の朝は早い。ネットで自分たちが世に送り出したメニューがどう評価されているかチェックする。ある朝、満を持して送り出した「お好み牛玉丼」について検索して、こんな記述に行き当たる。

 すき家の社員というのは、たぶん毎日、盛られた牛丼並を前にして、上に何かのっけたり、かけたり、かき混ぜたりして、新しいメニューを考えるのが仕事ではないかと想像するのだけれど……

2008-10-09 - 関内関外日記(跡地)

 ……! ふざけるんじゃあないよ! ゼンショーのゼンは禅のゼン、禅の心で商売をするゼンショー! それで全勝するのもまたゼンショー! 目にものみせてやる、このワーキングプアのブログ野郎! チーン、ポクポク(←禅の擬音)。
 そして……。

とろうま中華 コトコト煮込んでトロトロになりました。

http://www.zensho.com/menu/recommend081208.html

 もうトロトロじゃねえの? 労使問題も怖くないのじゃよー? もう、まったく、まいった。悪かった。俺が悪かった! そういうわけで、「角煮丼、並一つ」。牛丼や豚丼に何かをのっけたりする以外のお手並み拝見するよ(まあ、五目中華とかネギトロとかあるわけだけど)。
 が、「角煮丼、並一つ」の前に一瞬の逡巡があった。「俺は角煮に目がないが、けっこうもたれてくるのも事実。はたして掩護無しで戦え抜けるだろうか?」と。ここは何か辛味や酸味の支援がほしい。たしか、「カラシもう一袋あれば」というような話があったんじゃないのか(……Gigazineのレビュー。今見たら特盛についてであった)? 
 そこで頭をかすめたのがサイドメニュー「キムチ」である。キムチと角煮という組み合わせは試したことがないが、辛味と酸味でよいマッチングになるんじゃないのか? あの「通」の男が頭をかすめたのも確かである。
 が、そこで目に入ったのが牛丼屋のレゾンデートル紅ショウガ紅ショウガである。「あれ、角煮と紅ショウガで無敵官軍じゃねえの?」。が、時が前に進むと誰が決めたのか、俺の口はすでに「角煮丼、並一つ、と」と言ってしまっていた。「と」……「と、サラダ」。サラダ? ええい、まあいい。
 と、チャイナ店員「サラダ……セットデスカ?」。(おぁ、セット? あれ、単品サラダとセットって同料金だっけ? サラダとなんだっけ、滅多にサイドメニューの贅沢しねえからわかんねえよ!)……「ェェト、セットゥ?」と俺。「アー、サラダ、ミソシル、ツキマス」。「オ、ナイスデザイン。オッケー、オーケー、ノープロブレム、ティダアパアパ、セット、サラダセット、ワンプリーズ」(←たぶん言ってない)。
 そして運ばれてきた角煮丼。例によってカラシ袋をちぎって、丼の端の方に絞り出す。少し多めの紅ショウガを、ちょっと白米の見えていた部分に盛る。七味唐辛子を味噌汁、そして角煮丼にも軽くふる(←頑固なラーメン屋だったら、主人に重曹汁をぶっかけられているところ)。
 さ、いよいよ、角煮を口に運ぶときが来た。しかし、いきなり一切れいってしまって大丈夫か? 問題ない。メニュー写真に偽りなしというか、肉の量に問題はなさそうだ。さあ、一口。……! ……! 熱い、熱いよ! これ、熱すぎる、やばい熱い。マジ熱い。俺、下品な早食い野郎で、しかも料理熱々じゃなきゃ我慢ならん反猫舌なのに、これには耐えられん、びっくりした、牛丼屋でこの温度! やはり天網恢々疎にして漏らさずの例に漏れずすき家様は見ていたのだ、俺を! 丼にかける情熱を思い知れと!
 と、もう、汗が出てきた。やっぱり寝起きに角煮丼は辛い(徹夜明け、昼から出勤の昼飯です。ついさっきの話)。が、ンマーイ。いいよ、この角煮丼、美味いよ。角煮の肉自体もいいけど、ものっそいタレの染み込んだ大根(だよな?)、それにシイタケの存在。とどめは上に盛られた長ネギですよ。これは贅沢だ。もちろん、紅ショウガ、カラシの支援もあって、なぜかサラダと味噌汁もあって(セット頼んだからだと思う)、いや、参った。舌をやけどしたから味分からなかったんじゃねえの? という可能性を抛下して、もうすき家は豚の角煮丼チェーンになってもいいんじゃねえの、と。もちろん、「すき家が角煮丼を作ったらこのくらいのクオリティじゃないの」という枠を外れていないのにも好感だ。
 というわけで、やがて「カレー角煮あいがけ丼」だの「明太高菜マヨ角煮丼」だの「三種のチーズ角煮丼」だの「ホワイトシチュー角煮丼」だの「お好み牛玉角煮丼」などのバリエーション展開されるのは確実だと思うが、その日を期待してみたいとも思うのであった。あと、寝起きに角煮丼喰うとテンションが上がると思った。