振り込め詐欺はこの社会で愛を叫んでいるんだ

振り込め詐欺:未遂容疑で現行犯逮捕 /神奈川

http://mainichi.jp/area/kanagawa/news/20090204ddlk14040241000c.html

 振り込め詐欺の猛威は衰えることを知らない。今朝も、ワイドショーで振り込め詐欺の実験をしていた。もちろん、ワイドショーの実験だから信憑性やなんかはわからない。わからないが、興味深く見た。
 実験の内容は、まあ実際の振り込め詐欺に近い。若者本人と同じくらいのスペックの人が、その親や祖父に電話を掛けて、「財布を落とした」だの、「会社のパソコンを壊した」だの言うのだ。
 で、それに対して、引っかかった例だけ放送していたのだけれども、なんかもう見ていて泣きそうになったね。電話の向こうの祖父やら親やらの、孫や子からの電話に対してうれしそうなことったらない。「ほんとうによく電話してくれたねえ」という感じがにじみ出ている。相手が見知らぬ人というのに限らず。
 これが本物の詐欺だったら、あとは入れ食いだろう。「困っている孫のためになんとかしたい!」という愛情のあついことといったらない。「それ、振り込め詐欺じゃねえの?」という銀行員の言葉だって、愛情を邪魔する障害でしかなくなる。
 ……と、案外、この憂き世も情にあついんじゃねえの? 親が子を殺し、子が親を殺すばかりではないってことだよ。うん、まだ、親と子は、血のつながったものたちの多くは、助け合うことができるんだ。これは朗報だ。これをポジティブに捉えるべきなんだ。振り込め詐欺対策なんてのは、親と子の情のつながりを断ち切り、絶え間ない分断と対立、猜疑を生み出すばかりなんだ。ひっかかったふり作戦なんてのは、悪に対してより狡智な悪をぶつけるだけの、憎悪の連鎖しか生み出さない、断固反対だよ! 振り込め詐欺を、愛の市場として、愛の再確認の事業として、育て、発展させていかねばならんのだよ!
 ……と、いうわけにはいかん。いかんので、対犯罪テクニックの普及と同時に、なんだろう、「離れて暮らす親と子の会話を取り戻す国民運動」みたいな啓蒙活動を……オェ、なんだそれ、気持ち悪い。そんな社会はごめん蒙る。
 だいたい、親と子なんてのは、もっと殺伐としてなきゃいけないんだよ。むしろ、本当の親から、祖父母から、金をむしり取れ、それを使え、それが世代交代ってもんだろう、違うのか。たぶん違うよ。それじゃあ、バハハーイ。

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