日本ウエルター級タイトルマッチ|沼田康司vs中川大資

日本ウエルター級タイトルマッチは、王座初挑戦の中川大資(31)=帝拳=が、王者・沼田康司(24)=トクホン真闘=を3−0の大差判定で破り、新王者となった。

http://www.sanspo.com/fight/news/090210/fgb0902100504001-n1.htm


 ひさびさにボクシングを観た。この試合。いい勝負だった。王者沼田は、小柄ながら強烈なパンチでノックアウトを狙うタイプ。対する挑戦者の中川は長身、長いリーチを活かしてコツコツ距離を取るタイプ。でも、パンチ力もあるらしい。キックにたとえれば、セーム・シュルトさんや佐藤嘉洋みたいなタイプ、だろうか。
 俺は、シュルトさんや佐藤みたいなタイプは好きだ。でも、この試合は沼田びいきで見た。やはり俺はちびなので、小柄びいきのところもある。あとは、なんというか、沼田が中川の懐にいかに飛び込んでパンチを叩き込むかという、攻略戦というような見方ができるからだ。
 序盤はまず中川ペース。伸ばした腕のその先で、コツコツとジャブを食らわせていく。一発一発のダメージは小さいかもしれない。しかし、みるみる王者の顔が赤くなっていく。これが、じわじわとスタミナを奪っていくようだ。
 対する沼田、そのジャブをかわし、あるいは受けつつ詰めて、見るも強烈なフックを繰り出す。これ当たったら一発だ! というような鋭さ。が、なかなかクリーンヒットできない。中川のディフェンス、受け流し。序盤3ラウンドは中川ペース。お互い最初から飛ばしている。
 が、4ラウンドで流れが変わる。沼田がアッパーなど繰り出し、パンチが当たる。少し中川ふらつく。実況によると、沼田のジムの会長は、ボクシングで大切なのは、「何を捨てられるか」という判断だというらしい。このラウンドも、その指示が飛んだらしい。これはかっこいい。肉を切らせて骨を切る。何を狙って、何を得るという前に、何を捨てられるか。これは武士道―禅に通じる。戦いの、まさにその刹那、守るでも得るでもなく、捨てる。捨てたところに生きる道を見出す。沼田はそれができる選手だという。……4ラウンド、5ラウンドは明白に沼田ペース。俺は、このまま沼田が決めるかと思う。
 ……が、流れは変わる。解説によると、4と5、沼田が前進一辺倒から少し退いてペースを握ったというが、今度は中川がちょっと出る、中川から出る。そう思っていると、いつの間にか、また序盤と同じく中川のジャブが入りまくり制空権奪取、王者飛び込めない、気分をスイッチするためか間合いを置くなど、どうにもならなくなってくる。これはいろいろの要素があるだろう。攻め疲れというやつや、あるいはジャブの散弾がじわじわ効いてきた、など。中川のジャブの嵐はやまず、沼田の少し上体が動かなくなってくる。そんなシーンが増える。ついには9ラウンドで左目付近をカット、試合はそのまま中川ペースで判定決着。最後までだれることは一切なかった。両者ともお見事。そして勝者に拍手。
 いや、本当にナイスファイトだった。試合から目が離せない。それに、たぶん、クリンチが一回もなかったんじゃないかと思う。レフェリーが両者に割ってはいるシーンもほとんどない。ローブローが一回あったが、偶発的なもの。両者の、とくに沼田から中川へのリスペクトが感じられた。クリーンでいい試合だった。激闘だった。この両者の試合、それぞれにまた見たくなった。それでは。

関連______________________

……ウェルター級といえばこのあたりだろうか。