俺は歯医者が苦手で苦手で怖くて怖くて嫌いで嫌いでもうどうしようもなく、そのためにも歯のケアというのは念入りに念入りに念入りにおこなって、俺を二度と歯医者に行かせないために俺は俺にせいいっぱいのことをしていきたいと思っている、日々思っている、思い続けて、思わない日はないといっていい。思わないでか、何を、歯医者に行かなくて済むよう歯のケアをすること。
そういうわけで、俺の敵は虫歯の虫歯であって、虫歯にかかわるあらゆるものであって、虫歯というものを敵視する怒りの心から地獄に落ちてもよいという覚悟であって、虫歯の前で俺は仁王の憤怒を身にまとうところであって、虫歯予防、虫歯ケア、フッ素、すばらしいフッ素、フッ素の神、フッ素の女神、フッ素の天使、虫歯予防、すばらしい虫歯予防の神々、それを崇め、たてまつり、晴れた日には陽光のあたたかさに感謝し、雨の日には地への恵みに感謝し、ありがとう、ありがとうと、歯を磨いている。
しかし、よく考えてみると、歯みがきは時間さえかければ歯磨き剤はいらないというような声もあって、そのような声に真摯に耳をかたむけてみれば、俺は歯みがきに時間をかけるものであって、歯のケアは糸ようじやキシリトールガム食いによって補強もされており、それを考えてみれば、歯みがき剤については新たなる目的を与えてみていいのではないかという気がしてくる。
歯周病菌とたたかうサンスターG・U・M(ガム)|サンスター|SUNSTAR
- 出版社/メーカー: サンスター
- 発売日: 2013/02/28
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そういうわけで、歯周病対策に乗り出す俺は、ガーム! ガーム! ガーム!の大合唱に今や宮殿はその威容に亀裂が入り、歯周菌は死んだことに気づかないほどの早さ、圧倒的な暴力、駆逐、破壊、陵辱、吟遊詩人が歯周菌を悲しむ間もない滅殺、終焉。さらば歯周菌。ああ、太陽と星、太陽と星、数え切れない太陽と星の、目もくらむほどの輝き、鼓動、躍動、無邪気な腕の力、歯周菌、あなたの残してくれたこと。さようなら、さようなら。
俺の歯茎はすごく健康になったようであって、よしんばリンゴをかじったとしても、リンゴから流れる血の色は何色かもわからず、ガーム神の宮殿には花々の蜜の香りにつつまれて、終わらない夢を見る。三月のまだ少し寒い満月の夜に、そっとあなたのおもちゃ箱を開けてごらん。そこに虹色の羽根があったらおおあたり、さあ、窓を開けてデンタル、デンタル、トゥインクルと呼びかけてごらん。もっと大きな声で。お前は通報される。監獄の冷たい壁、安物の歯磨き粉。後悔しても遅い。お前の歯は黒くなり、麻酔なしで削られる。お前の口は牢名主のうすよごれた肉欲のためにしかない。ある晩、お前はイノセンスについて深い洞察をえる。次の朝には冷たくなって、埋められている。そこから生えろ一本の草。ガーム。
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