ダイソーで210円のサスペンダーを買う

 最近、おれは、よく、通販で、古着の、服を買う。昨年末、革のコートを買ってみて、「あれ、いいじゃん、古着」と思ったのだ。とくに、ズボンがいい(おれは、パンツ、なんて言葉をうまくつかえない)。「ズボンなんて履いてみなければ?」という考えもあろうが、おれの、足の長さなど、知れたものだし、たぶん、おそらく、なんだけれども、裾上げ度合いの強まってるものは、品物のブランド、状態に対して、なーんか割安なんじゃねえの? という具合。実際、「この値段でこんなよいものが!」というものにも、あたった。
 さて、そんななか、こないだ買ったウールのズボン。黒地に赤と白のチェックが、入ってる。これ、買ってみてきづいたが、ボタンフライで、こういう素材で、ボタンフライというのは、なんか心許ない、というのはともかく、ベルト・ループついてねえの。
 それで、ほっといたら、ずり落ちてくる、ほどではないにせよ、ちょっとやっぱり心許ない。というわけで、あれだ、ズボン吊り、サスペンダー、あれが必要だ。はっきりいってどんなものでも、いい。ダイソーに行った。行ったら、210円のと525円のを売ってて、おれは、210円のを買った。買って、さっき、つけた。
 うーん、なんか、こう、なんだろうね。なんか、矯正器具、つけられたみてえな。でも、ズボン、吊されてる、その中に、おれ、入ってる、そんな気持ち。ストライプのクレリック・シャツに、サスペンダー。気分は、アメリカの、デブ。デブの同僚。ドーナツ、いや、ホット・ドッグ食ってる。陽気なデブ。だけど、たぶんひどい人種差別と、女性蔑視の、白人のデブ。裏で、マフィアと通じていて、最後の方で、なんかぶっ殺されてるのが、見つかるの。なんの、最後? エルロイの小説かと思った。そんな、昼下がり。おれとサスペンダー、はるか、むこうに、でも、確実に、アメリカ。アメリカの、デブ。サスペンダーで、ズボン吊ってる、デブ。
 は、ハロー?