goldheadさんはgoldheadと打つのが面倒になったのでした。

 今日から日記を三人称で書こうと決めたgoldheadさんでしたが、一日目にして早くも挫折しそうなのでした。理由は二つありました。一つは、登場人物が一人しかいないので、ほとんどの「goldheadさん」を「私」とか「俺」に代替しても大丈夫そうだということ。もう一つは、「goldheadさん」というのが打ちにくい、ということでした。いちいち左手の親指でスペースバーの左側にある「英数」キーを叩くのが面倒なったのです。
 頭の悪いgoldheadさん、これらの事情をぽかーんと口開けて考えて、前者はともかく、後者すぐにでも、どうにでもなるということに気づいたのです。全角で打てる名前にすればいいだけの話だったのです。そうと決まれば話は早いのです。なぜって、goldheadさんは、トップダウンボトムアップもない、神聖モテモテ王国以下の簡単な組織であるところの、いや、組織未満であるところの、「一人」だからです。
 とはいえ、この現代社会、いくつもの自我の相克に悩むというのが人間の定番です。goldheadさんも例外ではありませんでした。それに、このように一段突き放したところからなにか書こうとしているのだから、よりいっそう気が狂うといったあんばいです。つまりは、自分の中で対立意見が出てきたのです。
 まず、とりわけ頭の悪そうな一人のgoldheadさんが「……金色頭でいいんじゃないの?」と、あまり考えた風でもなく言いました。それに対して、うんざりするほど頭の悪そうなgoldheadさんが、「……それじゃあまるで髪の毛の色みたい。今、ぼくの、そんなに光ってはないよ。黄金頭いいじゃん。ブックマークでも、そうだし」などと反論します。すると、今、眠りの底から這い上がってきたばかりの、極めつけに頭の悪そうなgoldheadさんが、「あー、おいおい、金色頭とか黄金頭とか、いったいなんて読めばいいんだ。ぜんぜんわかんない。すなおにカタカナにすればいいじゃない」などと言うのです。すると、頭が悪いうえに馬券ですってばかりのgoldheadさんが、「カタカナにしたら競馬のゴールドヘッドと見分けがつかないじゃないか」と反論し、抹香臭いgoldheadさんは「無門関の‘巌喚主人’にならって、‘主人公’にしよう」と言い張り、しまいには、ラブプラスに夢中で頭がすっかり悪くなってしまったgoldheadさんが、「マナカに呼んでもらってるのと同じ、‘しょーくん’にしようぜ」などと言い出す始末です。これにはさすがに私も我慢できなくなって、「おいおい、さすがに本名までさらすつもりはないんだぜ、いい加減にしろよ」と、介入することになりました。
 そんなわけで、goldheadさん、もういよいよこんなふうに日記を書くのが嫌になってきたみたいです。この男は、いつだってこんな風で、多くの人間の信頼を失ってきたのでした。しまいにはそれに気づき、今度は最初から信頼されるほどの人間関係を築かないという方法まで編み出し、これはすばらしい処世術などとうそぶいているのだから、まったくもって救いようがありません。救いのない人間にいつまでも関わっていては、こちらも腐ってしまいますので、このへんにしましょう。それでは、おしまい。