チビのおっさんは身長差別を告発することもできない

あなたの身長偏差値は 28.81 です
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　俺の身長は160cmだ。身長について、いろいろリミッターを外して書く。ふと、身長のことが気になったのは、この身長偏差値が流行るちょっと前だ。

はてなブックマーク - goldheadのブックマーク / 2009年11月23日

　ブックマークで見かけたこの記事だった。女性が男性を身長によって選択することがセクハラかどうか。俺にはむずかしい話はわからん。わからんが、そういえば俺は低身長のチビだったと。
　しかし、だいたい、「身長は何センチ？」などと聞かれるまでもなく、見ればわかるものだ。一目瞭然。日々それを晒して、こっちは生きてるんだ。そういえば、そうなんだ、と。

　身長差別？　というようなものがあるのかどうか。わからない。あるのかもしれない。ただ、ともかく、得だなどということはない。さらに、恋愛、というか、モテるかモテないか、という、「みんな平等に扱いましょう」といかない分野では、もう一目で弾かれる。シークレットブーツを履いたり、頭にシリコンを入れてごまかすわけにもいかない。
　ガキのころは、だいたい、体力や筋力ですごく不利だ。喧嘩したって負けるだろう。だから、中学生のころとかは、いつもナイフを持ち歩いていて、なにかあったら迷わず刺そうと思っていた。刺す機会はなかった。ポケットに隠したナイフは似合っていただろうか。

　なんなんだ、このひ弱さは。うーん、いろいろさかのぼって考えるに、まあ肉体的な弱さという、チビというところがまずあって、そのあたりでビクビク生きてきたというか。正直、馬鹿にされたら殺す、お前らは体の大きさで偶然有利だから、こっちもハンデとして武装させてもらう、という具合で、中高時代はナイフ必携の危ないお子さまだった。滅多刺しにしてぶっ殺して、犯罪評論家に「犯人は自分の無力さにコンプレックスを抱いており、必要以上に遺体を損壊した可能性があります」とか言われるタイプ。
俺はいったいなんなんだ？俺は俺をあらためて問い直す - 関内関外日記（跡地）

　コンプレックス。そうだ、コンプレックスだ。俺のいろいろの人間的欠陥、とくに成功体験に対する不感症など、このあたりが根っこかもしれない。ほかの、いろいろの面も、全部「チビだからな」と言われれば、それで納得できそうなところもある。後ろ向き、内向的、人間嫌い、怠惰、スケベ、馬券下手、なにもかもチビのせいだ……とまではいかないまでも。

「（俺）君の欠点は、背が低いことだけなんだからね！」と。
　そのまま二人は、うしろをむいて走り去ってしまった。俺は少しうれしくなったあと、絶望した。背なんてどうすればいいんだ。俺はいまでも背が低い。同年代で背の順に並ばされたら、やっぱり一番前だろう。前にならわれる側だろう。
人間ぎらいの俺は、人を好きになりすぎるのかもしれない - 関内関外日記（跡地）

　だから俺はたぶん、世の中を見上げて生きてきたんだ。もう疲れた。いくらがんばっても背は伸びない。背伸びなんか疲れるから嫌だ。いつまでもガキのままだ。ありきたりの合コンだの、婚活だの、結婚だのとは、もう無縁だろう。身長はどうにもならない。
　「チビでも結婚している人がいる」、「もっと大きな障害を持っていても、立派な人生を歩んでいる人はいる」……そりゃそうだろ。でも、知った話か。俺はそいつらじゃない。だいたい、チビは障害か？　少なくとも、俺は障害者として扱われたことはない。ただ、チビなだけだ。背の順で一番前なだけだ。俺が小中高の間に、同じ歳で俺より小さかった男は、一人にしか出会わなかった。悲しいことに、背の順で並ぶことのなかった予備校での出会いだった。
　まったく、どうしていいかわからん。たとえば、俺が背のせいで就職差別を受けたとか、同じくらいの人間がそんな目に遭ったとか、そんなことがあれば、俺だって、これは問題なんだ、などと言えるかもしれない。だが、どうも、しかし、そんな話はない。ただ、日々、俺は低身長を晒して、生きているだけだ。背の順に並ぶこともないから、あまり意識しないが、やはり、あらためて考えれば、俺は小さい。一目瞭然だ。それってなんなんだ。ともかく、俺にあと5cm、いや、10cmほしい！　10cm伸びても、まだ偏差値は47なんだぜ。
　で、あらためて話を戻すが、チビはもてない。恋愛対象に入らない。あるいは、出会い系？　お見合い？　よくわからないが、プロフィールで選抜されるものについては、数値で落とされる。これは厳しい。ただ、文句はいえない。美醜の判断に平等はない。学校内で「みんなでなかよくしましょう」というのはありうるが、自由恋愛市場は別だ。おまけにいえば、俺には学歴と金もない。まったく。もちろん、俺もまた、なにかプロフィールで女性を見るとなれば、体重が重すぎると思えば弾くだろうし、なにより顔で弾くだろう。なにかそのような条件で、プロフィールで、見るのであれば、だ。もちろん、人を好きになるというのは、好きになるのが先だと、俺はそう思っている。でも、ただ、なんというか、おもしろい話じゃないよ。
　ああ、よくわからんが、損だ。ついていない。両親ともに小さめだ。ただ、父の父は背が高く、おまけに化学博士だった。その血統要素はどこに消えたんだ。
　最近、さらに日本人はでかくなっているようだ。恋愛結婚が増えて、背の高いやつがよく結婚して、チビは排除されて、背の高いやつばかりになっていくのだろう。もしも、身長と収入に相関関係があれば、その傾向は高まるだろうし、ごきげんな話じゃないか。人間の身体というのは、近代化とともに均質化していったというが、その流れにのっとったものだ、たぶん。ああ、あと、そうやって、でかいやつばかり配合を繰り返してきたのが、西洋の貴族、上流階層か。
　運が悪い、ということなのか。まったく、いいおっさんになって、こんなことを愚癡っているというのは、まったく、大人になりきれていない、と言われるかもしらん。また、もっと背が低くても……という話だって山ほどあるだろう。ただ、偏差値28だ。俺から見て、どっちの山が高いか、大きいか、言うまでもない。べつに、偏差値どうこうに文句をいうつもりはない。むしろ、面白いくらいだ。だいたい、数値化されなくても、チビはチビだ。見てわかる。外を歩いているだけでは、出自や年収はわからん。チビはわかる。かといって、この身長では、成長障害だとか、小人症というわけではない。また、見て分かるという意味で、皮膚の色みたいなものかもしれないが、たとえば黒人差別などと一緒に語れば怒られるだろう。
　生まれるところは選べない。この身体も選んだわけではない。ものすごく不幸かというと、そうでもない。上を見ればきりがないが、下を見ても同じことだ。ある面で俺が人に羨ましがられるなにかを持っているかもしれない。とはいえ、チビはチビだ。損だ、ついてない。ついてないけれども、それほど愚癡ったり、嘆いたところで、とくに同情もなさそうだ。だいたい、俺自身にしても、毎日毎日身長のことで悶々としているわけではない。だいたい、最近では金のことで内面の憎悪が膨れあがっている。それは、べつの話。
　まあ、金のことでいえば、俺は就活とかしたことはないからわからないが、身長が低いということから、その膂力の無さというものがある。これも何度も書いてきたが、「仕事がない仕事がないというが、○○でもなんでもやればいい」とかいう文脈で、○○に肉体労働とかが入ることがあるが、冗談じゃない、肉体労働は、肉体的に合格ラインに達してる人間にしかできないものだ。
　うっとうしい愚痴だ。だが、しかし、どうもやっぱり愚痴しかでない。愚痴しかでないところがしょうもないとも思うが、まあ言葉にすれば。もやもやが晴れるところもあるし、よけいつのらせるところもある。しかしまた、あんまり、ネットで、チビについて読むこともないというか、いや、あえて探そうとしたわけでもないが、属性の一つとして、目にすることはあまりない。多くない。ネットだと、黙っていれば背が見えないからか。いい話じゃないか。普段隠していることをネットで書く、その逆か。
　このエントリには、提言も告発も論議もオチもない。ただ、ともかく刻んでおく。あんたの視界には入らないかもしれないが、チビってのは存在しているんだ。差別や社会正義と一緒に語られるわけでもないけれども。そして、こんな風に、なんかもんもんと、その身長に見合った小さい脳味噌とハートをもって、こんな感じに日々生きている人間がいる。それだけだ。
　だからまた、それぞれにそれぞれのこういうのをまた、ぶちまけたり、ぶちまけなかったりすればいい。好きにしろ。