よい子のクリスマス〜サンタさんとてんしさまの町〜

 12月25日は、なんの日かしっていますか? この日はクリスマスといって、サンタさんがよい子のおともだちに、たくさんのプレゼントをもって、空からふってきてくれるのです。
 みんながぐっすりねむってしまった12月24日の、まよなか。どこかとおくから、しゃんしゃんしゃんというすずの音がなって、たくさんのサンタさんがそこかしこにふってきます。
 サンタさんが、じめんにおりて、もぞもぞと、よい子のお部屋に向かって歩きはじめようとします。そうすると、北のそらのいちばん大きなお星さまがきらりとひかって、こんどはたくさんのてんしさまがまいおりてきます。
 てんしさまはみな、うつくしいおとこの子で、フリルのついたシャツと、半ズボンにソックスガーターといういでたちなのです。そして、右手にはルイスビルスラッガーの金属バットをもっています。
 少年の天使たちは、ふわり雪の路地に着地すると、目の前のサンタクロースの後頭部をめがけて、金属バットを振るう。野球的なスイングではない、単なる暴力としての打撃。ゴツッと鈍い音を立ててサンタクロースは前のめりに倒れる。まだある微かな意識あるいは無意識で、貧相なメガネ面をふり返らせるが、二回目の打擲がメガネと眼の周りの骨と鼻の骨を無茶苦茶にする。少年の天使がサンタクロースの内ポケットをまさぐり、二つ折りの財布を取り出す。一万円札が一枚と千円札が三枚。小銭は無視する。ビジネスバッグは放っておいて、紙袋をまさぐると、ピンク色の包裝紙でラッピングされた箱が二つ出てくる。むしりとると女児向けの着せ替え人形が出てくる。少年の天使はサンタクロースのくたびれた革のベルトを外し、スラックスを引きずりおろし、ユニクロヒートテックのタイツも、その下ボクサーパンツも引きずりおろす。薄汚い尻の穴に女児向け着せ替え人形の頭を突きさし、ねじり込む。着せ替え人形の髪が左右に振れ、尻の毛と絡む。
 少年天使の白い肌はいっそう際立ち、頬を桃色に輝く。次のサンタクロースをさがしに、ふわり中空に飛び上がる。街路から出てきた子供たちが、今まさにサンタクロースであるものに群がり、壊れたメガネのフレームから、ベルト、ネクタイ、すべてのプレゼントを受け取ると、またおのおのの路地に戻っていく。どこか遠い空でしゃんしゃんしゃんと鈴の音が響いて、雪はしんしんと降りつもる。メリークリスマスと誰かが言ったその声も、雪の白さに吸いこまれて消えてしまう。