なぜ人は埋立地に吸い寄せられるのか?

 ひさびさに自転車にまたがってさてどこに行こう? なんとなく海が見たいと思った。横須賀の方に行こうか? などと思って漕ぎ始めた結果、磯子とか杉田とかの埋立地あたりをうろうろしただけということに。
 なんどめだ? 埋立地、工業地帯、海辺の公園、釣り人たち。
 俺は今日、とくになんの新しい体験もしなかった。でも、埋立地とか釣り人については充実した。あるいは補充した。そのようなものだった。人間にはシュークリーム分も必要だが、埋立地分も必要なのだし、きっとそういうことなのだ。




 気がついたらノーリードの犬が足元にいた。むこうで飼い主の釣り人が「ピース」だか「チース」だか「チーズ」だかと呼びかけていた。犬にここまで接近されたことはないので、どうしたものかと思った。







 「こっち行ったらぜったい行き止まりなんだよな」と思いながら漕いでいけば行き止まりだったりするような。





 ゴールデンウィークの初日から、こんなところに来て釣りをしている君ら、それを見ている俺。すべてシマノのせい。



 海の中におっさんがたくさん浮かんでいたのですこし驚く。貝かなにかをとっているようだ。そういえば、潮干狩りの次は、こんな感じですごい数の家族連れが海に浮かべば。


 工業団地のデイリーヤマザキ(手袋類が充実)で買った菓子パンを食っていたら、猫がよってきた。さっきは釣り人のところに居た。釣り人のおばさんが「釣れなかったらごめんね」などと言ったのを真に受けたんだろうか。
 なかなか野良らしい野良猫。左耳がスパッと切れている。両目とも病気かケガかほとんどふさがっている。ソーセージのかけらを投げると食う。微妙な距離でみゃあみゃあ言う。
 さらにもう一匹来る。そちらの方がやや健康そう。ためしにまたかけらを投げると、最初のやつが横取りする。こっちの方が強い。
 どうしたものかね。ポケーっと海を見る。猫も待つのに飽きて転がったりしはじめる。よい陽気。二匹の位置が離れたので、別々にくれてやる。またポケーっとする。
 したら、幼稚園児だろうか小学校低学年だろうか、子ども二人、上の方の展望台みたいなところに走ってきて、「わー、水車!」と叫んでいる。風車だと思う。
 と、女の子が目ざとく俺の近くで寝ていた猫を見つけて、「あー、猫ー」などという。その兄か弟か、一緒にいた男の子がすばやくおりてきて、猫に近寄ったりする。
 猫、子供にちょっかい出されてむかついたのか、俺の方にとことこ逃げてきて、俺の座ってる足の下に隠れてしまう。
 と、気づけば俺は子供に囲まれていた。五人くらい。この距離感のなさはなんだろう。俺も昔こうだったんだろうか。「飼猫?」「いや、野良猫」「そうですか」。なんというか、俺を無視して猫にちょっかいだす。猫の方も、イライラしているらしく、反撃したりする、またおもしろがる。俺、ポケーっとパン食べて海見てる。
 ちょっと猫が可哀想になったので、子供の気をそらそうと、パンのかけらを猫の鼻っ面に出す。猫、混乱のさなかにありながら食う。子供、いっそう盛り上がって「かわいい!」とか言い出す。手を出す。いよいよ猫も走って逃げる。子供もそれをおっかける。俺ひとり残された。





 釣り人には悪いが、釣り人は「なんにもしない」ことを求めて、こんなふうにしてるんじゃないかとも思える。


 ヘリポート。ヘリが飛ぶところは見られなかった。かなりの高所恐怖症のくせに一度ヘリに乗りたいと思っている。



 マツが盛っていた。これってまったく性器だよな。いや、性器か。さて、いつまでこんな角度で、こう、ねえ……。






 シマノの陰謀。



 言っちゃ悪いけど、君ら馬鹿だよね。大馬鹿野郎だ。なんで金を払って、うわ、そんなことを。ああ、八景島シーパラダイス、なの。


 まあ、そんなところで。自転車の方は、疲れないようにたらたら漕いでた。45kmくらいだったか。もうちょっとうろうろしてもよかったけど、競馬のメーンに間に合いそうだったので、そうすることにした。
 帰り道、前を走ってるロードの人のロード用のジャージ、なにか絵柄があって、なんだろうと思ったら、なんかメイドさんのイラストみたいのだった。そういうのもあるのか、などと思う。
 あと、さらに白人のロードの人が追い抜いていったのだが、なんというのだろう、こう、サドルの高さというか、姿勢というか、これはべつの生き物のべつの乗り物だな、などと思った。そんなところ。


 あと、部屋で色の薄いフクシアとか咲いてる。

埋立地関連

 そういえば、潮干狩りの件で東扇島がブレイクしていてどうかと思った。お前らどうせ車で来てるんだろ? 海底トンネル歩いてないんだろ?

 ほらもう、行動のきっかけまで一緒。俺って新しい一日を迎える意味あんの?

 結局横須賀行っても同じことだったろう。