君、雨の日は競馬場へ行くといい。
ほかに行くあてのない、ねずみ色の男たちが、
しわくちゃになった新聞紙に赤ペンのインクを滲ませている。
馬もそれに乗る騎手も手綱をひく厩務員もうんざりして、
もっとうんざりした目がパドックに並ぶ。
馬は泥水を跳ね上げて走り、
それを浴びた後ろの馬は驚いて走る気をなくす。
馬券を持っている君はしけったタバコに火をつけようとしてやめる。
ねずみ色の空、ねずみ色の雨、ねずみ色の空気。
ここではないどこかに居場所はないと感じるとき。
君、雨の日は競馬場へ行くといい。
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今週のお題「雨の日の楽しみ方」