なんだっけ、あの映画だ、そうだ、『エクスペンダブルズ』? なんか違うな、『エクスペディション』? そいつは七夕賞走ってたやつだ、映画じゃない。そうだ『インセプション』、『インセプション』って、すげえフィリップ・K・ディックっぽいんだけど、なんか読んでたら監督はあえて読んでねえんだって言ってて、それに対してそれってどうなのよ? みたいな、先例を踏まえなくていいのかよ? みたいな話もあって、そんでも俺は、ある種、表現者っつーのか、アーティストっていうのか、なんていうのかわかんねーけど、たとえば評論家がいろいろの知っていてしかるべき先例を知らずしてってのはなんか批判されうるけれども、作り手が、「おれはこうやりてえんだ」、「前例? しらねー! この作り方がおれの流儀だ!」って言ったら、もうそうやる権利があるっていうのか、もちろん映画なんてのは一人でつくれるようなもんじゃねえけれども、まあその力の及ぶ範囲において、やりてえようにやる権利があるというか、まあ、ハリウッド映画なんてのは、なかなかそういうもんじゃねえのだろうが、ともかく、まあ映画監督を一表現者として見るならば、どう作ろうが、先例を意識して徹底的に研究しようが、あえて無視しようが作りたいように作るもんだろうみたいなところがあるんじゃねえかとか、それで出した作品がすべてで、作品について語ったことはその「すべて」に入らないから、ある意味では批評家の土俵で相撲とるハメになるんだろうけど、まあそんなんじゃねえかと思ったんだけど、おれがここで語ろうとするのはハリウッド映画でも七夕賞でもなくお好み焼きのことなんだ。
まあおれはお好み焼き屋でもないのにお好み焼きを毎日のように焼いて食って生きているわけだが、だからといってよりお好み焼きのレシピだの作り方だのを研究しようという気にはならなかった。いや、あえて遮断しようという気持にすら近いわけ。一つには、おれは凝り性なところがあって、一時期お米に浮気していたときなど、毎日味噌汁をだね、出汁から作っておかずを作ったりしていたんだ。はっきり言って、あれはもう金がかかりすぎる。同じ事で、下手にいろいろの素晴らしい食材など知ってしまって余計な金が出ていくと、おれがお好み焼きを主食とする大きな理由であるところの「コスト」を害するということだ。
しかしもうひとつは、なんというのか、お好み焼き者の矜持というか、そんなくだらないもので、「おれは毎日お好み焼き焼いて食ってるし、安くて珍しい食材ならとりあえず放り込んでけったいなものを作っているぜ」っていう、そんな意識が、おそらくはおれにない発想、すばらしい食材、テクニック、コツを学ぼうという意志を邪魔しているといっていいんだな。
しかし、しかしだ、なにがおれをそうさせたのかわからないが、おれは商店街の古本屋で一冊の料理本を手にとって、レジに持っていってしまったんだな。価格は200円だった。なんでそうしたのかわからない。もう終わりのときは近いのかもしれない。
というわけで、『お好み焼き百珍 関西風、広島風、もんじゃ焼きはもちろん、世界中のお好み焼き!』である。グラフ社発行マイライフシリーズNo.283である。なにせ世界である。おれが日本の領土の外に出ることはないだろうが(日本が他国に占領される確率が存在するのか知らんが)、世界のお好み焼きで百珍とまで言われたら、なにかこう、アストロ球団脳としては「アフリカ!」みたいになってフライパンに人間ナイアガラでもかましたくなるというものじゃないか。
しかし、タイトルはどうでもよろしい、問題は中身だ。
大和芋・青じそ・お茶漬けの素。フハッ! お茶漬けの素で生地に味付けして、大和芋を具として使うか!
ハンバーグ・カレー・まいたけ。アッハ! お子様の大好物にも程があるだろう!
イクラとサワークリームのクレープ。ぷふい! クレープもお好み焼きっていったらお好み焼きか! しかもイクラとサワークリームかよ、なにそれそんなの食べれない!
というわけで、おれは広大な世界に打ちのめされて、やはり黙って鯨肉など焼いておればよいのだと思った。おしまい。
☆彡
お好み焼き百珍―関西風、広島風、もんじゃ焼きはもちろん、世界中のお (マイライフシリーズ特集版)
- 作者: 有元葉子
- 出版社/メーカー: グラフ社
- 発売日: 1992/07
- メディア: ムック
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 出版社/メーカー: 東京システムハウス
- 発売日: 1998/01/09
- メディア: CD-ROM
- クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2011/07/20
- メディア: Blu-ray
- 購入: 7人 クリック: 40回
- この商品を含むブログ (69件) を見る
つーか、もう一回見るとか言いながら見てねえし。