宮崎駿も絶賛 映画『ダーク・ブルー』をみる

ダーク・ブルー [DVD]

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 知ってる人は知ってて当たり前なんだろうし、知らない人はまったく知らないんだと思う。いや、知らなかったものとしてそう思いたいが、これは名作だわ。宮崎駿絶賛って見て借りてみたけど、いきなりジブリのマーク出てきて提供してんのかよ! みたいなくらいのもので、まあまったくそれはそうとすばらしい。
 舞台はバトル・オブ・ブリテンナチス・ドイツの侵攻に対する英空軍、その中には英国人以外にも英連邦のパイロット、そして祖国をナチに蹂躙されたポーランドチェコスロヴァキアパイロットたちもいた。その、チェコスロヴァキアの飛行機乗りたちの話だ。ほら、『空軍大戦略』でも「英語でしゃべれ!」と隊長機に言われたり、不時着してイギリス農民に疑われたりのあれよ。
 ……という時点で興味ない人は興味ないし、知らんよそんなのと言われたらそれまでかもしれんが、「いやいや、そうは言わずに……!」と言いたくなる、そんな映画。だってその、祖国とはなにか、男と男の友情とはなにか、そしてNTRとはなにか! それに犬とか出てくるし……。
 つーか、個人的にショックだったというか、「そういうものなのか!」と気付かされたのは、英国に渡ってRAFの一員としてナチス・ドイツと戦ったチェコの勇敢な兵士(史実でもバトル・オブ・ブリテンの第二位のエースはチェコスロヴァキア人だ)も、戦後祖国に戻れば英雄かといえば、そこはもう共産主義国家になっていて、英国に協力したのを理由に強制収容所送りになっちまってたってことだ。思想犯や、元SSなんかと一緒にだ。1951年には解放されたらしいが、名誉回復は1991年だとかいうんだから、なんというか、まあなんというか、国家というものは、共産主義国というものは、イデオロギーというものは……。
 とまあ、いろいろ盛りだくさんで、ただ、それがうまい具合に現在と過去を行き来し、物語が編みこまれていて、よくできてんなぁと思うわけだ。

 んで、これは訓練シーン。ちなみに、実戦時は最初からハリケーンでなくスピットファイアを与えられている。それはともかく、うえにあったみてえに、最初は英語教育からはじまって、「離陸はtake off」みたいなところからやるわけ。一方で、チェコパイロットは早く飛んで戦いたいから、ついに若いのが怒って教室からでていこうとするの。したら、その前に老女性教師が立ちはだかって、「これが私の戦争なの。邪魔しないでくださる」ってキッといい放ったあたりはかっこよかったね。
 で、やっぱりなんだ、そのこれで空戦シーンがしょぼかったりしたら残念なんだけど、チェコ映画侮る事なかれという具合で、じつに見応えがある。1時間飛行させるのに1万ドルかかるスピットファイア2機を使っての映像から、さらに過去の記録フィルムをリファインさせたり、墜落シーンは模型を使ったり、何種類かの2機の実機映像を重ねてたくさんに見せたり(最初にドイツ軍に接収されるチェコスロヴァキア複葉機、Avia B-534あたり?はたくさん映ってたけどどうだったんだろ?)と……このあたりは、なんと特典としてメイキングフィルムにスタジオジブリのCGの人と樋口真嗣の解説が入ったりしていてすばらしい。こないだ「特撮博物館」を見に行ったおれにとってもすばらしい。でもって、実写とCGと特撮との融合というか、そのあたりの技も堪能できるわけだ。なんというか、特撮魂みたいなものは世界の映像作家に同じく流れているのか? まあ、ヒューマンドラマにスピットファイアに特撮と、一粒でなんども美味しいという具合である。
 いや、しかし、スピットファイアな。バトル・オブ・ブリテンでドイツ機をやった8割はホーカーハリケーンだとかいうけど(「歴史群像欧州戦史シリーズ「英独航空決戦」)、やっぱり美しいっちゃ美しいな。いや、おれはメッサーシュミットびいきだけんど、あの楕円形の翼がアルビオンの崖の上空を飛ぶ姿というのは、なんかあるね。監督もロールスロイスエンジンはまるでシンフォニーだとか言ってたし。いや、しかし。
 いや、しかし、それでもって、なんか話がテクニカルな部分にそれたけど、やっぱりその、純戦争モノ(?)ではない、なにかがあるので、これはともかくなにか見る価値あるし、出てくる俳優も、おそらくはその国を代表するであろう人なんだろうな、などと思いつつ、いろんな国で作られてるいろんな映画のことなども考えたりするのだった。おしまい。

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……同じ監督のこの作品はアカデミー賞外国語映画賞とったので、こっちのが有名なんだろう。だけど、特典のメイキングで「あの列車爆破シーン一回分の予算」とか言ってた。今度見てみよう。