『善き人のためのソナタ』を観る

 『善き人のためのシュタージ』……もといソナタを観る。最近の趣味といえば「結局ヤーゴダが薬剤師だったって経歴は本人が言いふらしてただけのことなの?」みたいなのを気にすることであって、ゾルゲを讃え、フェリックス・ジェルジンスキー衛兵連隊(上司は制服着てたな。もしヴャチェスラフ・メンジンスキー衛兵連隊だったら中国製の高級絹のローブとかが制服だったろうか)なんぞを持っている東ドイツのシュタージも気になるからだ。あと、映画『スパイ・ゾルゲ』でオイゲン・オットをやった役者が主役というのも気になった。しかしまあ、ゾルゲに騙されたオットのあとにシュタージの役というの妙な話だ。
 で、その主役、シュタージのヴィースラー大尉役のウルリッヒ・ミューエ。これがすばらしい。寡黙で勤勉な秘密警察員。これがある劇作家の盗聴をしているうちに……という話なのだけれども、ほとんどセリフなんぞないのに、演技で語る、いや、なにより目で語る。数年前に亡くなったらしいが、いかにも惜しい。
 そんでもって、ストーリーもなんとも言えんところを残す。メーンテーマはとうぜんのことながらNTR……もとい、自由のない監視社会とその中に生きる人びとってところだろうが、それ以外にもう一個あるような気がする。はじめの方で、東独の大臣が「芸術家は魂の技師である」ってスターリンの言葉を引用するんだ。そうなんだろうか? でも、なんつーのか、じゃあ芸術家はなんのためのものか。誰のために表現するのか。このあたりで、劇作家の、女優のかれらの振る舞いとその結末について、なんか考えてしまうところはある。そしてまた、なんだね、邦題の『善き人』なのだけれども、そのよかれという思いが……というところもなにかのね。まあいいや。
 しかしまあ、東ドイツよ。ベルリンの壁崩壊はいつだったか。ホーネッカーという名前もひさびさに聞いたような気がするが、調べてみたら筋金入りだったんだな、とか。あとは飛び地であるところの冷戦下ベルリンという特殊状況が気になったりとか、まあいろいろ。そんなところで。

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……なんかすごい前にトラバントを主役(?)にした映画を見たことあるような気がするが、これだろうか。ちなみに『善き人』でもトラバントはたくさん出てくる。ただ、大臣が乗ってたのはボルボかな。