‘全学連’という名のツバキ

原色日本の椿写真集―千椿集 (1980年)

原色日本の椿写真集―千椿集 (1980年)


 ちょっとツバキの調べ物をしていたら、‘全学連’という名の園芸品種があって驚いた。
 ……えーと、単一引用符で囲んだ名前は園芸品種(cv.)で、誰かが作出して名を付けたもんです。でもって、だいたい花の色だの形だのから連想される名前、あるいは元になるものが見つかった場所の名前、なんか縁起の良い名前、古典文学からとった名前、だれかに捧げられた名前なんかなわけだけど、‘全学連’というのは珍しい。‘日本の誉’とか、‘日の丸’とかあっても、‘全学連’というのはなかなかない。なんとなくだが、園芸系は右寄りというか保守寄りの印象があって(バラとかすぐ皇族とか王族に捧げられるしさ)、意外な気がしたのである。連合赤軍事件以前の、国民が少なからず全学連を応援していた時期に作出されたものとしても。
 で、巻末の品種解説で‘千羽鶴’と‘草紙洗’にはさまれた‘全学連’の項を見てみる。花の特徴は以下の通り。

赤。弁数約十枚の半八重咲。ユキ蕊で花糸は黄。雌蕊が長くつき出る。

 なるほど、花色は「濃紅」でも「濃桃」でもなく「赤」。で、いったいだれが、いつ? この点に関しては以下の通り。

 ユキツバキ系。上越市原産。

 とあるのみで、作出者も作出年もわからない。検索してもひっかからない。なんか名前からして生産されてるとも思わないし……、その季節が去ってしまったら、別名にしちゃうなんてこともあるかもしらん。
 ともかく、ようわからんが、上越市にはなにかしら革命的な園芸家がいたのかもしれないと、ぼんやりと想像するのみである。おしまい。
 
追記:

 英語のページがなんかひっかかった。

Collected in Takada City, Niigata Prefecture, Japan 1960.

 「Takada City」とあるが、高田市は1971年に直江津市と合併して上越市になったのだから矛盾はない。やはり1960年なら、というあたりか。

The name refers to the militant students Federation in Japan which is very leftist and infers that the colour is as red as the communist flag.

 ま、そうやろう。

追記2:
[rakuten:takahara:10028538:detail]
 この本の「ユキツバキの新品種解説」にこんな記述があった。

花色(思想)は赤く、群生する雄蕊(大衆)から遊離独走してつきだした花柱が幾つかの(派閥)に分かれているのをもじって命名したもの。

 後づけ感もあるが、果たして。