人は生まれながらにして、六発の弾丸を持っている。
銀の匙なんてでたらめだ、六発の弾丸を持っている。
人はただ六発の弾丸とともに生まれてくる。
本当の話だ。
けれど、
六発の弾丸に気づくやつもいるし、気づかないやつもいる。
気づいてぶっ放すやつもいるし、大切に取っておくやつもいる。
気づかないままのやつもいるし、気づかないでぶっ放すやつもいる。
若くして撃ち尽くすやつもいれば、年老いて急にぶっ放すやつもいる。
人は生まれながらにして六発の弾丸を持っている。
ミサイルの一発でもなければ百連発でもない。
ただの六発の弾丸だ。
五発でもなければ、七発でもない。
きっかり、六発だ。
大層な武器じゃないけれど、無視できない力はある。
だれか人一人殺すことくらいはできる。
だけど人類を破滅させることはできない。
君は君の六発の弾丸に気づいていたか?
君は引き金を引いた覚えはあるか?
君は真夏の路地裏で一発撃ったかもしれない。
君は雪よりも冷たい雨の降る夜に一発撃ったかもしれない。
君は家族で年越しそばを食いながら一発撃ったかもしれない。
君は好きな子に好きだと告げられずに一発撃ったかもしれない。
思い起こせ。
君にはあと何発の弾丸が残っている?
残っているならば、
次はいつ何を撃つつもりか話してくれないか。
それと、
おれが撃ち尽くしたやつか、まだ一発も撃ってないやつか、
見極めてはくれないか。
もし、おれに手持ちの弾丸があるならば、
最後の一発は自分のこめかみに撃ちこむやつだから、
そいつは大切にとっておきたいと思ってる。
君はどう思う?