おれはヤバすぎるハマのネオヒルズ族


 おれはヤバすぎるハマのネオヒルズ族秒速5センチメートルのヤバさ全開でヒルズのトンネルの向こう、ロイヤルでゴージャス、英語で言えばフェイマス、まさにリッチなライフを送っている。そんなおれの片手にはタイ米でつくられた泡盛、いや、ゴールドの輝きのロイヤルな、そうロイヤルロッホナガー、ロッホかつナガーな味わい、ナガーかつロッホといってもいい。ハーブ煙草のエクスタシーをくゆらせて、ドアを叩くのはだれだ、お巡りさん。あ、例の巡回表みたいなやつですね。名前といつから住んでるかと、緊急連絡先をね、わかります。ところでお巡りさん、こないだ深夜、自転車の取り締まりでクソ寒いなかおれを呼び止めた人じゃないですか? 記憶にない? いつもは覚えているのに? おかしいな。それとも、山手署の前で急な左折車の目撃者としておれに連絡先言わせて胸糞悪い思いさせたお巡りさんですか? あ、自転車、そこにあんだろ? ルイガノの小径車だよ。部屋の中のは、ありゃあコルナゴとか書いてあるけど脱いだズボンをひっかけとくためにある。それがおまえ、ネオヒルズ(新山下)? ネオヒルズ(山手)? のハマっ子の心意気、はまっこ道志ってものだ。おれは札幌生まれの鎌倉育ち、名越の切通しで天狗にさらわれ三十余年、ケチなこと言うなよ、水飲んでくか、水道水? ああ、もうこんな時間だ、おれの左手に光るロイヤルでないセイコー5が時を告げる。投薬のお時間です。はい、そうですか。ところで看護婦さん、スピノザはこう言ったんですよ、「門前の刹竿を倒却著せよ」。