夢見るころのおわりに〜村上春樹『アフターダーク』を読む

アフターダーク (講談社文庫)

アフターダーク (講談社文庫)

 おれは『ねじまき鳥クロニクル』までしか村上春樹を読んでいない。
 『アフターダーク』。「私たち」の視点とテレビの向こうとこちら。おれの脳裏に浮かんだのは、ダンセイニ卿が夢を見られなくなっていくような、そんな悲しげななにかだった。かかってくる電話の向こうは曖昧模糊としたなにかではない、ある人間になってしまったのだ。アフターダークの世界では、近くで見れば顔のある人間それぞれが曖昧模糊になってしまい、それが絡みあう……? そう受け取ってもいいのだろうけれども。いや、弱まったんじゃなく、かじを切ったのかもしれない。まあ、おれは、『ねじまき鳥』の内容もろくすっぽ覚えていないくせに、そんなふうに感じたのだ。
 さて、「私たち」に巻き込まれてしまったおれには、『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』のようにあたたかいパンが用意されていただろうか。その予感はあるかもしれない。そのかわりに、いつかとどく、昔の小説に出てくるような長い長い手紙を待つ楽しみはあるのかもしれない。とっくの昔の話、それとも今流行の話かもしれないので、そんな必要もないのかもれないが。

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夢見る人の物語 (河出文庫)

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