おしゃべりの天国と地獄〜漫画『ゆゆ式』を読む〜

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 アニメすげえおもしれえから、あ、『ゆゆ式』ね、原作に手を出したわけよ。どうせ全巻買うことになるのだからと、全巻まとめて。そんで四巻まで読んだの。アニメの最終回はまだ見ていない。中途半端? まあいいじゃん。
 んで、これ、徹底的におしゃべりの漫画だ。おしゃべりすばら四コマ。『じょしらく』は「あたりさわりのない」っつって、当たり判定ありそうなおしゃべり地雷原歩いてんのに比べたらさ、ほんとうに「あたりさわりのない会話」という感じなのよ。
 だからさ、「箸が転んでもおかしい年頃のかわいい女の子たちが、百合要素込みでいちゃいちゃしてるのが楽しいです。いやされます。おしまい」……っつってもいいような気がすっし、おれそういうの好きじゃん。けどさ、好きなんだけどさ、もうちょっと何かあるんじゃないかと思って、この中途半端なタイミングになんか書こうと思ったわけ。あ、もうおれの話になるので『ゆゆ式』好きは漫画かアニメに戻ってください。
 でさ、ぼっち漫画の『私がモテないのは〜』にひどくブッ刺されるおれがいるわけじゃん。登校拒否、ニートだったんだぜ。でもさ、いる一方で、気の置けない友人がいた時期もあんの。すげえ下らない時間を一緒に過ごす連中がいて、すげえ下らないことに時間を費やしたりしたこともあんの。だから、『男子高校生の日常』とかも、「おいやめろ」とかってなんねーとこもあったりすんだけど。
  そんで、そのときのおれはどうだったか。自意識過剰や我が身びいきが多分に含まれているかもしんねーけど、それなりに面白いことを言えるやつだった……かな。とくに率先して変なことしたり、すすんでいじられ役になったりはしねーけど、要所で笑いを取ったり、変な言葉を流行らせたり、そういうことはあったんじゃねえかって。話してていくらか笑いは提供できますよっつー、そんな時期もありました、と。そう思わせて下さいよ、と。
 で、そのバックに何があるかというと、家庭環境かもしらん。父は人間としてどうかという欠陥をたくさん抱えていたが(今思えば精神疾患発達障害だろう)、話はおもしろかった。それなりの雑誌の編集者だか編集長をしていたような類の人間だからかどうか。そんで、倫理や道徳の底が抜けてるって感じでさ。少なくとも、世間一般で好ましいとされている倫理や道徳に対して、理論武装して鼻白むタイプ。わしの言ってることが本質だ、ラディカルだって、ガキにも説いてくる。母方もいささか度を越したブラックジョークを好む人間が多いし、今思えば、母もわりと毒舌なんだよ。
 するとどうなるかというと、普通の、いいことなんてことを言ってる暇はない、といえば言いすぎだが、「なんか面白いこと言わなあかん」という空気みたいなものが存在してくる。そして手っ取り早く笑いをとるには……なんつーの? 不謹慎に走りがち、みてえなところはあると思う。あるよね? なんか極端な方へ、突飛な方へ。ただ、流れをぶった切っちゃいけねえよ。会話の流れの源泉にあるところとか、あるいは、流れが岩に当たってはねた滴にひっかけるとか、もうおれはうまく話せねえし、説明もできねえけど、そういうのをうまい具合に、スッと出してさ。
 そんで、話は『ゆゆ式』に戻るんだけど、って戻るのかよ。さっきみんな帰っちゃったよ。でも、この漫画、んわりと死ぬだの殺すだのの方へ話が転がるじゃん。なんかその感じ、わかるんだよね。話の極端、あるいは不謹慎の行き着くところって、そこんところじゃん。で、行き着いたら話止まっちゃったりするくらい強い。だから止まるネタもある。いや、マジ、そうだよなって。
 不謹慎っつえば、こないだ死んだどっかの県会議員だけど、「刑務所かよ!」とか、なんか気の置けない内輪だったらドッときておしまいレベルだったかもしれねえよなって、ちょっと思ったりする。そんでだれかが、「おい、告発すんぞ」とかツッコミ入れたりさ。それがまあ、文字、ログ、ブログになると、そうはいかねえよって。「とくダネ!」がツッコミ入れにくんぞ、と。そこんとこおっかねえから、おれだってこの匿名の日記ですらあたりさわりのないことしか書けないっつーか、完全によそ行きだしさ。
 あとは、なんかこう、漫画ががやがやっつーか、がちゃがちゃしてんだよね。がちゃがちゃっと来て、終わったんだかなんなんだかってところで、ページは進んでく。おしゃべりもそんなんかなって。あるいは漫画としてどうか? って、むしろそういうところに、こう没入できるとこあるぜっていう。ああ、いいな、こういうのあったな、あるんだろうな、みてえな。
 でもね、もうね、そういう喋り相手みたいなのが欲しいかといえば、あんまねえかな、とか。いや、話はじめたら、ほんとうに下らないことでえらく長い時間盛り上がれる彼女の人がいるにはいるんだけど、それとはべつに、友人みたいなもん? そういうのはな。まずどの不謹慎までえぐれるかみたいな間合い計んなきゃいけねえだろうし、とか。つーか、おっさんになったら、新しい出会いとかねえぜ。その上、不謹慎のチキンレース会話してるおっさん集団とかどうよ? みてえな。ま、それ以上に、おれはもう自分が思ってるほどおもしろい人間でない公算が高い。相応に年取ってねえから。それに、一人というのもすばらしい。ねえ、お母さん先生。あんたそう思わない? そうでもねえか。おしまい。

追記:アニメ最終回観た

 海に向かって江の島を左に見る、あれは片瀬西浜。県立湘南海岸公園のあたり。あの三人はどうしてそこを選んだのか、よくわからないのだぜ。江ノ電なり小田急線なり、せっかく江ノ島近くに行くのなら、いずれにせよ江ノ島の方の駅を使いはしないか。いや、江ノ島なんか珍しくない界隈にお住まいで? ……とか元鎌倉市民としてどうでもいいことを思った。おしまい。
 

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