短編との付き合い方〜大友克洋 他『SHORT PEACE』を観る

 短編と名のつくものには、どこか身構えてしまうところがある。それが普通なのかどうなのかわからぬが、おれにはそういうところがある。映画でも小説でもそうだ。ある作家に興味を持ったとき、さて長編と短編どちらからいくかといえば、間違いなく長編から行く。初心者はまず短編から、という評判であってもそうだ。人にすすめる場合もそうだ。たとえば、フィリップ・K・ディックなどは短編の名手といってもよく、逆にいくつかのろくでもない長編がある。そんな場合でも、おれは短篇集よりむしろ『ザップ・ガン』か『空間亀裂』あたりを勧めるだろう(いや、勧めないけど)。
 まあ小説の話はいい。映像作品の話だ。映像の短編、短編映画などというと、さらにおれは警戒心を高めてしまう。横浜とかでなんとかトリエンナーレなりなんとかナーレなりをやっていて、ついついそこに紛れ込んで、現代芸術家の映像作品など観て、面白いと思ったためしはない。全くないとは言わないけど、ほとんどない。もちろん、おれがその作品を解するだけの知識、バックボーンがないという不幸はある。だが、そんな人間にケチをつけられる芸術家も不幸だ。不幸と不幸の関係だ。あまりいいものではない。
 ……と、ここまで書けばわかるように、おれはなにか短編の映像作品にものすごいなにかを求めている。「おれはなにか短編の映像作品にものすごいなにかを求めている」と思っているわけではないが、たぶんそういうことなのだろうと思う。すなわち、大友克洋らによる短編アニメ映画集『SHORT PEACE』にも、できるだけおくびに出さないようにしながらも、ものすごいものを求めていた可能性はある。すごい高いハードルを。先週、ダンプカーみたいなえらい代物(『風立ちぬ』)にぶつかったあとに、もう一発食らわせてくれ、というところがどこかにあったのだ。
 と、ハードルを高くしてましたよ、と明言することでハードルを下げたところで言いますと。正直言って、これ1800円は高くないですか? 1200とは言わないけど、1500でどうですか? 
 って、いきなり金の話になってしまうんのだけれども、なんというか、素直な感想がまず出てきた。金を返せとは言わん。ただ、600、いや、300円くらいのマイナス感があった。
 もちろん、現代芸術と同じく、おれにアニメ作品鑑賞のための知識に欠けるというのもはっきり言って置かなければフェアじゃない。三十を過ぎてから三年くらい深夜アニメをいくらか見ているくらいのものだ。見る人が見れば、「あのシーンの動きだけで6000円の価値がある!」というものやもしれん。だが、おれは不幸にもそうならんかった。「金物飾りのかんざしでお辞儀をするとしゃらしゃら音がするのか!」と思ったくらいだった。いや、全般的に見ている間は夢中でございましたが。
 大友克洋……について言っておくと、小学生のころ『AKIRA』の漫画と映画にハマったくらい、なんだけれども、『MEMORIES』とか観に行ったよなあとか、まあ、それでも、ちょっとすげえ特別な存在みたいに思ってるところもあって。でも、大友以前、大友以後みたいな世代とは遠く離れてるしな。いや、「火要鎮」の細部とかすごいことになってんだろうけど、みたいな。もっと長くても、だとどうかというと、どうかわかんないんだけど。一番良かったのどれっていうと、ひょっとしてオープニングか? 『アニマトリックス』のあれっぽくって。

すげえな、アニメ、いろいろやれるんだなって。「BEYOND」のすごさとかにはコロッといってしまう。もっといろんなアニメ見たいなって。

『マトリックス・リローデッド』、『マトリックス・レボリューション』、『アニマトリックス』 - 関内関外日記(跡地)

って、森本晃司という同じ人が手がけているのか。そうだ『アニマトリックス』意外と面白かったな。うん、やっぱりなんだ、今回この『ショート・ピース』にはコロッといかなかったけど、なんかもっとアニメだな、アニメ。深夜アニメがあって、ジブリみてえのがあって、ほかにもエッジの効いた短編とかアートスティックなのとかあったりよ。よくわかんねえけど、いろんなところに期待すんよ。できれば観るよ。それじゃさま。

 
 ……って、それぞれの作品の感想書いてねえし、こういうの書いとかないとあとでおれが後悔するし。
 「火要鎮」は上述のしゃらしゃらはともかくとして、立ち食いそばとかの江戸の光景がいい。あと、たぶんこないだ読んだ笠原和夫の本のおかげか、江戸の火消しについてはいくらかどんな存在かわかった上で観たなってのはあった。
 「九十九」は旅の職人? がものを直す所作がすばらしく、あと二種類くらいその手さばきを観たかった。しんどいか。
 「GAMBO」はバトルシーンにもっと期待していたのだけれど、コロッといくくらいすげえ感じではなかった。女の子はかわいい。
 「武器よさらば」は、いくらか読んだことのある大友克洋の漫画っぽさがあるなーという安心のクオリティ。カトキハジメ云々というほどよく知らないのでそのあたりはよくわからない。ただ、局地的な戦闘の細かいリアルっぽさみてえなのは十分満喫というところか。