立ち飲み屋、競艇中継、おれはサマージャンボ宝くじに当選しない。

約2千万円をだまし取られた福岡県の男性(54)は「だまされるのがバカだと思うが、当時はそれだけ追い詰められていたのかもしれない」と振り返った

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130821/crm13082114160007-n1.htm

 いまさらの話だが、サマージャンボ宝くじに外れておれはびっくりした。おれは、おれこそは宝くじに当たって楽をして生きられる人間だと思っていたからだ。ひどく不条理な気がする。おれは働きたくないし、金さえあれば安楽をえられる人間だ。人畜無害に絵を書いたり、本を読んだりしながら一生を静かに終える。ジプレキサさえ飲んでおけば、人にあまり迷惑をかけることもないだろう。そうだ、もう不安から解放されれば、ベンゾジアゼピン睡眠導入剤に頼る必要もなくなるのだ。サマージャンボ宝くじが当たらなかったことは、おれをひどく動揺させた。クーラーの効いたオフィスから外に出る。空気が暑い。空気が厚い。おれを押しつぶすような気になる。おれは100円ローソンにとぼとぼ歩く。立ち飲み屋、競艇中継、おれはサマージャンボ宝くじに当選しない。

 発表によると、2人は6月、都内のホテルで、仙台市の中古車販売業の男性(37)に対し、1万円札を2枚の紙で挟んで薬品をかけ、1万円札3枚に変えるマジックを見せた後、「これでお金が作れるが、(男性が欲しがっていた)1億4000万円分の金を作るには、元手となる現金が必要だ」などと言い、男性が後日、仙台市内で用意した現金1850万円を隙をみて盗んだ疑い。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130816-OYT1T00015.htm

 宝くじに当たらない人生というのはつまらないものだ。つまらないどころか苦痛にすぎない。なぜ宝くじに当たらないのか不思議でならない。苦痛から解放される方法があって、おれは3,000円もの大金を投じたというのに。せめて1850万円ほしい。大笑いしながら放尿できるから、大笑いしながら射精できる。そんなことができるかどうかしらないが、いくらか苦痛から解放されるに違いない。おれのもとに解放軍は現れない。いっそおれが解放軍を率いて宝くじを当選させたいところだが、解放軍をどこで募ればいいのか見当がつかない。

 横浜市は21日、市営元町・中華街駅自転車駐車場(中区)の管理室から金庫が盗まれたと発表した。7月24日から同様の被害は4件目で、神奈川県警は同一犯による連続窃盗事件とみて捜査している。

http://sankei.jp.msn.com/region/news/130821/kng13082112190000-n1.htm

 闇夜、ヌレイエフのように舞う透明の解放軍。朝起きると、おれのポストに65万円。これが10日続くと650万円になる計算だ。100日で6500万円。悪くないペースだ。もっと進撃をつづけろ解放軍、200日、400日、800日。
 ただし解放軍はいません。なぜか? 
 不思議でならない。宝くじに当たらない。当たるべきだ。当たらなくてはならない。たったそれだけのことが、なぜできぬ。機械の体がほしいとか、馬で出勤したいとか、無茶な話をしているわけじゃない。マクドナルドでハンバーガーを買う、ハンバーガーを食う。そのていどのことじゃないか。おれには時間がない。おれには時間がありすぎる。何時間、何十時間、何万時間、不安でなくてはならないのか。プリントアウトして医者に行った。おれはいくらかクリアになって、もっと不安に直面しなくてはならなくなった。幸せになれる薬もあるじゃないか、買い方は知らないが。おれはいくらかクリアになっているから、博打のテラ銭のことだって知ってるさ。知ったうえで、おれは宝くじに当たらなければならない。それ以外になんの道もない。快楽はいらない。安楽でいい。安楽のためには金がいる。宝くじはおれを当てなければいけない。それ以外のあらゆる戯言には耳をかさない。見るべきものも見ない。たとえベテルギウスの爆発の光が横浜市中区まで届いたって、見上げたりなんかしないんだ。