もっと「『アルゴ』」を観たかった〜『アルゴ』〜

アルゴ<エクステンデッド・バージョン> [Blu-ray]

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"CIA史上、最もありえない救出作戦―それは“ニセ映画”作戦だった。"
全世界を震撼させた、歴史に残る大事件が起きたのは、1979年11月。革命が吹き荒れるイランで、過激派がアメリカ大使館を襲撃、大使館員を人質にとる。彼らの要求は、悪政の限りを尽くしてアメリカに逃げた前国王の引き渡しだった。混乱のなか裏口から6人が脱出、カナダ大使の家に身を隠すが、見つかれば公開処刑は間違いない。絶望的な状況を打破するため、CIAの人質奪還のプロ、トニー・メンデスが呼ばれた。
トニーの“名案”は、ウソの映画を企画し、6人をロケハンに来た撮影スタッフに仕立て上げ、出国させるという作戦。特殊メイクの第一人者で、『猿の惑星』でアカデミー賞に輝いたジョン・チェンバースが協力、瞬く間にプロデューサーと脚本が用意され、SFファンタジー「アルゴ」の盛大な記者発表が行われた。イランどころかアメリカまでも欺き、タイムリミット72時間のハリウッド作戦が始まった! ところが──絶対にバレると反発する6人、脱出者がいることに気づくイラン、緊迫のなかCIAから作戦中止の命令が! 果たして6人の命の行方は──?

 ケツのわかってる映画。わかっていてもなおの緊張感、というのもあまりない。シリアスでストイックなつくり。
 幾分しかたない面もある。なにせこれは現実が面白すぎるからだ。だから、ユーモアを差し挟む余地は少ない。そうなのかもしれない。
 しかし、おれはSFファンタジー「アルゴ」をもうちょっと観たかった。『バーバレラ』のような安っぽさ。そして、砂漠でジョン・グッドマンがかぶりものをして「ファック!」を連発。イラン人との温度差からくる笑い。しかし、一歩間違ったら死。そういうものを期待していた。高望みだ。
 もちろん、ノンフィクションに立脚してるからけれん味を下手に出すわけにはいかない。それに人質の運命がかかっているからそんな暇はない。だから几帳面で丁寧、真面目か。真面目なんだな。手堅いし、しっかりしている。なにかの賞をやろうということになっても当然だろう。ただ、なにか予定調和の中にすっぽり入ってて、どうこう言えませんや、という気にもさせられる。よくもわるくも。
 あとは、おれの内なる反米心がもっと撃てや、吊るせやとか思ったというのは、物騒だし、映画とはとくに関係ないので放っておこう。いや、なんだか結局はアメリカ万歳になったとは言い過ぎかしらないが、終わりはそういう印象を残されたようで。カナダ? カナディアンマンは出てこなかったような気がする。それも心残りだ。おれに書けるのはこのていどのことしかない。終わりだ。