ぼくらはもう初恋を射精できないから

 電車に乗る夢。四人がけのシート。隣に眠っているセーラー服の少女。彼女はすっかり眠り込んで、まるで無防備にぼくに体を預けている。ぼくも目を閉じて、まるで無防備に彼女に寄りかかる。そのすべては肯定されているという確信があった。電車は進んでいった。ぼくらは互いを隔てるなにもがなくなり、ひとつのあたたかな何かになっていく。
 目が覚める。すべての恋の消息がふっ、と消えるのを実感する。ぼくの日々は報われぬ仕事、事務手続き、日用品の買い物、そんなものに消えていくのだ。
 ぼくらはもう初恋を射精できない。
 そして、つまらぬ日々ばかり、つみかさなっていくのだから。
 ぼくらは、もう。