亀田一家と陰鬱な楽しみ


 亀田興毅ランダエタの試合。採点が問題になった。世を騒がせた。何年前だろうか。そのとき、おれが痛烈に後悔したのは、自分の(ボクシング知識がないとしても)採点がないことだった。それ以来、テレビの地上波で見られるボクシングの試合については、相変わらず知識なしに採点らしきものをとるようになった。そうやって試合を見てみると、手数が気になり、手数が気になるとクリーンヒットかどうか気になり、いや、手数ばかりでなくリング・ゼネラルシップとかいうものを見なければならないか、と思い直しつつ、どちらからクリンチにいってるのか気にしたりと、わからないなりに集中せざるをえない。漫然と見ているよりはおもしろい。たとえそれが目の肥えたファンのそれと大いに違おうとも。それとも、だいたい、プロのジャッジが割れるのだから、正解なんてありゃしないんだって、開き直ってやろうか。
 というわけで、昨日の亀田大毅対リボリオ・ソリスだけれども、おれは115-113でソリスとなった。でも、べつにそれはどうでもいい。それよりも、もっと、なんというのか、なにがなんだか相変わらずまったくというか。亀田興毅の前の試合もゴタゴタがあったらしい(見ていたのに3Rくらいで寝落ちしてしまった。本当に)が、またこれだ。
 というか、ソリスはなんなんだ。なんだかんだいって、しっかり減量してきたやつの方が偉い。いや、偉いというか前提だろうというか。そんで、ソリス軽量失格で剥奪、でも試合はやります、ってことになった。ここで統一戦も絡んできて……。大毅が負けたらIBFのタイトル剥奪ってのはちょっとかわいそうなんじゃねえかと思ったのは本当だ。だってあんた、減量すっぽかして(どのくらいの影響あるかわからんが。もちろん、体を作っていないからマイナスなんてこともあろうが)、階級一つ上のようなのと試合やらされてってのは不利もあろうし。
 そんで、ソリスのモチベーションとかどうなってんの? これもなにか裏があるの? ってまあもう、どういう筋書きがあるの? みたいな目をこの一家には向けざるを得ないんだけど、そんなん考えたりして。それで、失うものがないソリスが亀2をボコボコにすんじゃねえのかとか、はっきりとわかる形でなんかやらかすんじゃないかとか、ボクシングの本道とは離れたところで変な期待をしたりしつつ。
 しつつも……試合は普通に、なんというか、あまりに手が出ない大毅の負けとしか見えず。体重の問題で慎重になりすぎたのか、なんだかわからんが、いくら地元開催でも、最後まで立っていれば勝ちと揶揄される亀田一家でも……いや、スプリット・デシジョンだったけどさ。
 それでまあ、ああ、次男はきちんと買収の投資をされていないんだ、かわいそうにとかチラッと思ったりして、自分でも何考えてるんだかわからない次元に飛ばされて、ああ、あと、ソリス喜びすぎだろとか、まあ、でも、亀が判定負けすることがあるのもいいことだと思ったりね。誰かの勝利でなく敗北を喜ぶのは陰鬱なことかもしれないが、それでもね、とか思ってさ。まあ、どっかから台風みたいなのが来て、なにかしらいっぺんに吹き飛ばして空位作って帰っていったみたいな、そんなさわやかさはあったかなとかね。いや、空位というのは狙い目ができるてことかね。
 とかね、思ってたんだけど。

 相手のリボリオ・ソリス(ベネズエラ)は試合前日の計量で体重超過により失格となった。IBFの規定は、挑戦者が計量で失格した場合に「王者は勝敗にかかわらずタイトルを保持する」と明記している。その上で、両陣営とJBC、IBF、WBAによるルールミーティングで「亀田大が勝てば王座統一、負ければ両王座とも空位」と決めたはずだった。
 これを試合後に突然翻したIBF幹部は「われわれのルールに従った」の一点張り。亀田陣営は「試合前から知っていた」と主張し、JBC関係者は一様に「聞いていない」と困惑した。

http://www.sanspo.com/sports/news/20131204/box13120419450010-n1.html

 一転してタイトル防衛(保持?)とかね。なにかね。いや、おれの最初の感覚だと「タイトル剥奪はちょっとかわいそうじゃね?」だったんだけど、取り決めは取り決めじゃねえの、というような。そんで、亀田陣営が知ってたって情報はなんよ。じゃあTBSとかはどうなんよ。なんなんよなのよ。なんだかわからん。ボクシングはわからん。団体も階級もチャンピオンの種類も多すぎてわからん。
 やはりおれが見たいのは本当に強いもの同士が、ベルトを賭けて戦うようなものであって、なんというのか、なんだろうね。そりゃ興行の都合、TV局の都合、もちろんボクサーやその陣営の都合(ヤバいのとは試合を避けたい……ってのがむき出しの実利というもんなんだろう)あるだろうけどさ、けどさってさ。それで、まあ、どこか有料放送の世界、世界のボクシングにはそういう真の戦いがあんのかなーとか思うと、どうもなーという気になる。気にはなる。けど、そこまでボクシングファンじゃねえしなぁ。
 まあ、結論もなにもねえけど、わざわざ誰かと誰かが殴りあってんだから、やっぱりそこには陰鬱でない、すっきりとしたもんがせめてあらなんだら報われぬという思いはある。そういうことで、おしまい。