3つの小さな過ちについて

f:id:goldhead:20140519183403j:plain

1.

1,412円の支払いに対して2,011円を出して599円のお釣りを受け取る男。彼は小銭を作りたかったのだろうか? 冗談じゃない。2,012円を出して600円のお釣りをもらいたかったのだ。それを、レジのおばちゃんが1円玉1枚すくいそこねて、レジの自動支払のところに突っ込んだもんだから、ジャラジャラジャラジャラとお釣りも自動で出てきたってもんだ。意味がわからなかった。世界が止まった。「あ」とおばちゃん、支払い台の1円玉に気づく。「ごめんなさいね、すごく細かくなっちゃって、ごめんなさいね」といって、支払われなかった1円玉と599円を合わせて手渡す。100円玉1枚、500円玉1枚来るものと思っていた財布が悲鳴を上げる。

 

2.

桜木町始発の横浜線に乗った。横浜線といえば古い車両のイメージがあったが、それは新型の車両だった。ドアの上に液晶画面のあるやつだ。桜木町を出発する。液晶画面に「次は大口」と表示される。おれは頭がおかしいが、さらにおかしくなったのかと思う。それともこれは、新しい車両に合わせて始まった横浜線の「快特」かなにかか? そいつは横浜駅もすっ飛ばして大口に停るのか? その後も、横浜につけば「ここは大口」というし、横浜を出れば「次は菊名」という。なんてことはない、表示が東神奈川始発になっているのだ。そいつに気づいてないのは、何百人かの乗客じゃなく、運転士と車掌だ。自動音声も間違ってるんだぜ。すごい恥ずかしい状況じゃないのか。いや、恥ずかしいので済むのか? このままずれっぱなしで八王子まで行ってやろうか? そんなことを思う。が、菊名(本当の)に着く前あたりになって、急に画面がJRのロゴになった。リブートだ。表示も音声も正確になった。おれは幻の横浜線の「快特」に乗った男だ。

 

3.

仕事を終え、スーパーで買い物をし終えたあと、職場に忘れ物をしたのに気づいた。自転車ならすぐなので戻ると、まだ電気がついている。ドアを開けると、社長が一人で掃除機を使っているところだった。「なぜこんな時間に掃除をしているのですか?」と問うと、「食べていた豆を落として、慌てて動いたら、踏みつけて粉々にしてしまったのだ」という。覆水は盆に返らず、割れ豆は掃除機のパックの中で泣く。おれはそんな状況を七歩の詩にはできないし、七十歩歩いたって無理だぜって思ったのだった。