行って損はない! ヨコハマトリエンナーレ2014(横浜美術館編)

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http://www.yokohamatriennale.jp/2014/

 結論から言うと、ヨコハマトリエンナーレ2014は行って損はないんじゃないかと思う。横浜美術館の展示しか見てないけど、そう思う。チケット代と内容の費用対効果にうるさい貧乏人のおれが言うのだから間違いない。前売り券値段で横浜美術館のみ、それで元は取れる。
 とはいえ、この一作品の一撃で元は取れた、そういうのはなかったかもしれない。たとえば高嶺格の『鹿児島エスペラント』一発みたいな衝撃だ。でも、全体的に「いい感じ」の雰囲気で、ボリュームも満点だった。正直、横浜美術館のあとに一日で他会場を回ろうというのは無理があろうという気もする。遠方よりの来客にとってはたいへんなことだろうが。
 それとおれは今回、音声解説の機械を借りて首からぶらさげた。美術展では初めての経験だ。なぜならキュレーターである森村泰昌が自分でやっているからだ。おれは大学のころ講義のゲストに来た森村泰昌の話を聞いて、たいへんおもしろかったことを覚えている。展覧会も行った。著作も持っている。せっかくだから、聞いてみようじゃないかということだ。解説は丁寧でわかりやすかった。むしろ、もっともっと話したがってるようにも聞こえた。悪くない。他と比べようがないが、そう、悪くない。
 それでは、どのような展覧会だったかメモしよう。写真は撮影可のものだけのはずだ。たぶん。手違いがあったら勘弁してほしい(……と、ここまで書いてはてなダイアリーからはてなブログにコピペ。写真多いと使い勝手がね……)。

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ヴィム・デルボア《底床トレーラー》

 まず、美術館の前に鎮座するのはこいつだ。こいつはなんといっていいか……、いいものだ。さらに動いたりしたらすごくすごいのだが、そこまで求めるのは酷だろう。ただ、なんというか、でかさの割には小さくまとまってる感もある。やはり煙くらい噴射したほうがよかったんじゃないだろうか。

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木村浩《言葉》

 「このことについては、黙ってることにした。」……忘却をメーンテーマに掲げるにふさわしいか。忘却。華氏451の芸術。そのためにおれはわざわざ『華氏451度』を買って読んだんだ。えらいじゃないか。

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釜ヶ崎芸術大学inヨコトリ

 と、最初は「空気を描くには」みたいな話、それこそ、ジョン・ケージからはじまるのに続いて、釜ヶ崎芸術大学とくる。ここは本当に見どころ多く、時間を食う。悪くない。おれはこういった活動とかいうのに鼻白むタイプだが、活動はともかくとして、出来上がりの出展品の面白さというのは格別だ。これこそ社会的活動としてどうとか、表現とはなにかとか、そういう小難しい話はどうでもいいんだ。寿町に近いおれから見て、ここになにか地べたの人間の何かがある、そう思わせるところがいいんだ。おれは地べたの人間だ。

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ドラ・ガルシア

 とはいえおれはインテリゲンチャ(高卒)なので、このドラ・ガルシアの鏡文字『華氏451度』を見れば、すぐに序文の引用を思い浮かべる。どうせなら新訳の日本語版でやれよ、とまでは言わない。

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エドワード&ナンシー・キーンホルツ《ビリオネア》

 それでまあ、なにか現代美術っぽいものもあり。というか、これで撮影可となると、どう撮れるかな? なんて方に意識が向いてしまう。で、おれは決してそれは悪いことじゃないと思うんだ。思う一方で、作品に正対しているのかどうか悩むところもある。あらゆるものが撮影可(ついでに触ってもいい)なら最高なのだろうけど、ファインダー越しに見る(撮る)という行為がどう位置づけられるのか、まあさっぱりわかんない。

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マイケル・ラコウィッツ《どんな塵が立ち上がるだろう?》

 この展覧会は比較的「言葉」が多いと思うが、一番ぎくりとさせられたのがこれだ。くわしいことはわからないが、バーミヤン石仏破壊を命じた人間の言葉だろう。作品としては、バーミヤンの石から英国の空襲で焼けたドイツの図書館の本を作る、といったもので、どちらかといえば石仏寄りといってもいいだろう。しかし、この言葉である。タリバンの愚行とあげつらうことはたやすい。これを言い訳、言い逃れと言うこともできる。しかし、これこそが忘却されていく言葉のひとつではないかと、おれはそう思う。

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福岡道雄

 これはちょっとすごかったか。これ、書いてあるんじゃなくて、彫ってある、らしい。三作か四作あったか、強烈だ。

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福岡道雄《飛ばねばよかった》

 こちらは同じ作者でキャッチーな感じもするが。彫ってあるやつは一見の価値ありといえる。あ、作者のこととかぜんぜん知らんですから、おれ。

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サイモン・スターリング《鷹の井戸》

 そういう意味じゃ、長々と来歴が説明してあるこれなんて、「ぜんぶインチキが書いてあるんじゃね?」とか思ったりするくらいのもんで。いや、実際にそういうことをやってくれちゃってる芸術家とかいるしさ(高嶺格のじゅうたんみたいなやつ)。

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Temporary Foundation《法と星座・Turn Coat / Turn Court》

 大物といえばこれか。物理的な意味で。横浜美術館はそういうのに向いてない作りだというが、これはなかなかでかくてよかった。自動的に判決の槌が振り下ろされるのもよかったし、裏面もコートかよ! というのも面白い。ここでなにかしらのパフォーマンスも行われたらしいが、あたまのなかでDJ検察とか想像するだけも面白いじゃあないの。

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グレゴール・シュナイダー

 これはエレベーターで一階に降りることで見られる作品空間。隠し部屋みたいでおもしろい。まあその、隠し部屋みたいでおもしろいってことだ。

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 あとは和田昌宏という人の一連の……なんというか、そうかこの美術館にはいいアトモスフィアが満ちていたのか! という発見と、冷たい水(エンパワーメント済)美味しいですというあたり。

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吉村益信《大ガラス》

 そんで、「久しぶりじゃねえの、大ガラス!」とか思って、美術館を後にしたのだった。

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ギムホンソック《熊のような構造物》

 んで、向かいのマークイズの地下4階まで潜って、なにかマスコット的に使われてるこの熊のような何か(よくいたずらされないもんだ。いや、元からゴミっぽいからか)に挨拶して、今日の日はさようなら。

 と、写真撮っちゃいけないあたりじゃ、足立正生がらみのエリック・ボードレールの映像をわりと長く観たり、坂上チユキという人の細密画を見て女が「君なら同じようなのを描けそう」とやっぱり言われたこととか(おれはタイルとかに細密な模様を描いて一生を過ごしたいと思っている)、松井智恵という人の作品は好もしいと思ったなとか……。

 あ、そうだ、忘れちゃいけないのが、美術館の入り口どまんなかにあるマイケル・ランディという人のでかいでかい三階建てくらいのゴミ箱だ。ここに未完成や失敗品、不要になった芸術作品をぶち込んでいくという代物だが、ここにでんぱ組.incの人が衣装を投げ捨てるというパフォーマンスがあったんだ。撮影禁止。これに、時間的にたまたま遭遇したんだった。横浜市がらみのイベントでよく見るけど、ご当地じゃないよなーとかわりとどうでもいいこと思った。そんなとこか。

 つーわけで、他会場も待ってろよ、というか、なにか一発すげえの見せてくれよ、と期待は高まるばかり。ひとまずおしまい。

 

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