近江俊秀『古代道路の謎』を読む

1995年、東京都国分寺市で長さ340mの幅12mの道路が発掘された。造られた時代は約1300年前の飛鳥時代。そして驚くべきことに、この巨大道路は寸分の狂いもなく一直線に造られていたのである。
その後の調査の結果、現在では、7世紀ごろには日本中を張り巡らす巨大道路網が建設されていたことが判明している。東北から九州までの長さ約6300kmもの距離を、最大幅30mで敷設するというまさに巨大道路だ。田中角栄議員立法により実行された1966年の高速道路計画は6500kmであるから、それと同じ規模の距離をより幅広で建設していたことになる。

『古代道路の謎』新刊超速レビュー - HONZ

 しばらく前、この書評を読んで「すげー」と思っていた本。読んでみた。読んでみて古代へのロマンな心が湧き上がってきた。きたと同時に、それより小学校とか中学校時代に習った「日本史」の復習をしているような気にもなった。そのあたりのまとめ方がとてもうまいと思った。まさに小並感。ただし、再生される絵は山岸凉子日出処の天子』。
 で、道。古代の道。駅路。いいね、なにか目を閉じて想像したい。山岸凉子の絵だけど。それで、古代日本人の中央集権のシンボルとしての道ね、これを思い浮かべる。渡来人の技術と人海戦術。白村江の敗戦が「日本という国を作った」といったのはだれだったか。そして、この巨大道路が作られたのに、当時の記録にあまり残っていないのはなぜなのだぜ……。興味深い。
 興味深いといえば、古代道路を見つける術みたいなものも紹介されていて、勉強になる。古代文書や古地図にあたる、地名から類推する、そんなのは当たり前。面白いと思ったのは航空写真……は当たり前として、畑なんかが写ったものに、道が出てくるというもの。なにかといえば、畑の下の土が道に用いられたものとそうでないものによって、作物の成長だとか葉の繁りだとかに差が出るというのだ。むろん、土の色が違うなんてこともあるだろうが。こういうのをソイルマークとかいうらしい。なんというのか、やっぱり「すげー」と思ったのだった。小並感アゲイン。
 というわけで、これからは古地図を片手に外に飛び出そう!……というほどじゃあない。地名とかに興味があってもタモリほどじゃない。いや、タモリが適切な例かわかんないけど。でも、なんかのアンケートがあれば「どちらかといえば好き」に入るのかな、この領域。ま、今までなんの勉強も読書もしてこなかったわけだけれども、なんかそういう微妙に嫌いじゃないものというのは少なくない。一方で、なにか一つにのめり込めない。道にのめり込みたいとまでは思わない。実際にのめり込んだら大変だろうが。まあいいや、なんというか、好きな人にはおすすめ? いや、好きな人には常識? なのかわからんけど、「はー」、「ほー」、「すげー」という感じの一冊でした。おしまい。

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