アムナット・ルエンロンvs井岡一翔の感想

「勝っていると思った。あれだけ相手が逃げていたから。一翔は試合巧者で前に行っていた。ボディーから攻めて効いていた。1人、ジャッジがおかしい」
ジャッジの一人がつけた108―119の大差に怒りを隠せなかった。

 おれも1人、ジャッジがおかしいと思った。井岡につけた1人だ。職場の神奈川新聞でちらっと見たら、序盤はみなアムナットにつけていた。問題は中盤〜後半。たしかにアムナットは息切れ気味で、クリンチに逃れるシーンも多かった。減点もあった。たしかに前進か後退かでは、井岡が前に行き、アムナットが引いていた。けれども、井岡に手数がない。決め手がない。崩せない。むしろアムナットのパンチに力があるように見える。そしてクリンチ。
 フルマークでアムナット……という感じではない。かといって、確実に井岡が取ったと思えるラウンドもなかったように思える。その「確実に」でないのを全部アムナットに振れば108-119。それもありうるように見える。
 ただ、なんだ、なんだかフルマークで王者という感じではないのだな。序盤のペースが最後まで続けばそうだったろうが……。というわけで、なんとなくバランスをとるために、「ここはさすがにクリンチ多かったし、疲れ気味だし、井岡?」みたいなラウンドが入る感じ。おれはプロ野球の審判をやったことはないが、「さっきのきわどいコース、思わずストライクにしちゃったから、今度の打席ではボールにしてやろう」とかいう調整? そんな気分がどっかにあった。もちろん、おれはプロボクシングのジャッジでもないのだけれど。ただ、クリンチ逃れを絶対によしとしない観点があるとすれば、井岡の勝ちになることも……あるのか? まあよくわからない。
 よくわからないといえば、ボクシング自体の王者だらけ状態で、4団体になった上に、それぞれ何とか王者が3人ずつとかいたりすると、なにがなんだかわからない。そのなかで本当に強いやつを避けて……というのもテクニック(処世術?)なのだろうが。井岡はローマン・ゴンサレスから逃げたと言われている(おれはロマゴンの試合、新井田豊とのを遠い昔に見た覚えがあるくらいなのだけれど)。今回の敗戦で最速や無敗から解放されたと考えれば、また力をつけての真の王者に向かってもらいたい。勝てば勝つほど評価が下がる? 亀田一家のようにはならなけりゃいいなって。
 あとなんだ、wikipedia:アムナット・ルエンロンは強い上に魅力的なキャラクターだ。元ムエタイ選手で元刑務所暮らしで元アマチュアボクシングエリートで32歳で国際式プロデビュー。いろいろ盛られすぎという。それで、見た目はどっかしら山本‘KID’みたいで、パンチ力もありそうな上にテクニックもあって……打たれ強いかどうかは昨日の試合じゃわからんかったけど。井岡との再戦があるのかどうか知らないが、見られるものならまた見たい、そんな風には思ったな。そんなところ。