おれはコーエン兄弟の映画が好きだ。だからといってすべて好きなわけではない。アメリカ音楽のルーツがテーマの一つになっている『オー・ブラザー!』あたりは、正直どうも、といったところだ。さて、フォーク・ミュージックがテーマとなっている本作はどうだったか。後部座席のジョン・グッドマンよろしく心地よい眠りに誘われ……眠りはしなかった。ただ、ちょっぴりウトウトした。ウトウトするくらいがちょうどいい映画なのかもしれない。そう思うことにしようか。
主人公ルーウィン・デイヴィスは家無しのフォークシンガー。ある意味でアメリカの敗者。眠る家はないし、手を出した女性は妊娠するし(この女性が主人公をけちょんけちょんに罵るのはすごかった)、音楽を諦めようとすればそれはそれでうまくいかず……、なぜか猫をかかえるはめになって長い一週間を過ごす。
劇的であって劇的でない。しかし、実際に演奏したのを撮ったという音楽はどれもすばらしい。笑いどころもある。おれとしては「プ、プ、プレジデント……」の収録シーンのアル・コーディが面白くてならなかった。まあ、ほかにもぱらぱらと。ただ、全体的には暗いトーンの画面で、閉塞した感じの中をもがいていくような。「金のにおいがしない映画だ」とまではいかないが……。
たとえば、おれがもっと60年代アメリカ音楽に詳しければ話は違ったかもしれない、とも言える。たぶん、そうなのだろう。ただ、それを言っちゃあおしまいよという気もしてどうにも。さすがにいろいろの賞を獲っただけあって(おれは権威主義者なので)、まったくのクソ駄作、というわけはないのだろうが、やや物足りなさを感じた。『オー・ブラザー!』と同じような。オー。まあ、そんなところだ。
- アーティスト: サントラ,クリス・タイル,ナンシー・ブレイク,オスカー・アイザック,ボブ・ディラン,デイヴ・ヴァン・ロンク,オスカー・アイザック&マーカス・マムフォード,スターク・サンズ with パンチ・ブラザーズ,キャリー・マリガン&スターク・サンズジャスティン・ティンバーレイク,オスカー・アイザック&アダム・ドライバージャスティン・ティンバーレイク,ザ・ダウン・ヒル・ストラグラーズ with ジョン・コーエン
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2014/01/15
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (1件) を見る
_____________________________________________