ブローティガン『東京日記』を読む

東京日記―リチャード・ブローティガン詩集

東京日記―リチャード・ブローティガン詩集

ぼくはまたひとりぼっち ぼくは前にもここにいた
日本でも、アメリカでも、すべての場所で
人が何について話しているのか
  理解できないときにはいつも
「話すこと」(部分)

 リチャード・ブローティガンが東京滞在時に書き残した詩集であり、日記でもある。ブローティガンは日本におおきな期待をしていたのだろうか。なんらかの期待はあったのだろうと思う。ブローティガンは日本でその期待に応えるだけの体験をしたのだろうか。おれにはよくわからない。この詩集から感じるのは異邦人の孤独。ロスト・イン・トランスレーション。いや、トランスレーション以前のディスコミュニケーション。それが通底している。
 悲しい方に振りすぎているかもしれない。彼は日本でカレーを注文できたし、パチンコ・サムライにだってなれた。色恋のようなものもあったようだ。あったようだけれど、しかし。
 少し、藤本和子の本に書いてあったことに引きずられてるのかもしれないな。いや、でもここには、やはりなにかこの世に適切な居場所を見つけられない一人の孤独な男がいて……世界を見て、書き記している。その一瞬を。どの一瞬? この詩集に収められた一つ一つの詩。結局、心の一部を日本に残したとはいえ、終の棲家になるわけでもなかった。なにか失望のようなものがある。残念さがある。おれの中でそう感じるところがある。
 ……おれは少し悲しくなって、1976年の東京のことを少し思う。

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