ブローティガン『突然訪れた天使の日』を読む

突然訪れた天使の日―リチャード・ブローティガン詩集

突然訪れた天使の日―リチャード・ブローティガン詩集

 訳者あとがきによれば、ブローティガン寺山修司の葬儀に参列したらしい。そして、参列者の足許を行く蟻のことを詩にしたという。ブローティガンは競馬をしただろうか? ブローティガンが競馬について語るのをおれはまだ読んでいない。本書は"Loading Mercury with a Pitchfork"という詩集から、訳者が71編を選んだものだ。一編一編はどれも短く、なるほど訳者の言うように俳句のようでもある。

恐怖から君は一人ぼっちになるだろう、
きみはいろんなことをする、
だけどどれもこれもぜんぜんきみらしくない
「恐怖から君は一人ぼっちになるだろう」

気づくことはなにかを失うことだ。
このことに気づくのにぼくはなにを失ったかについて考える、
 もしかしたらそのために嘆くことになるかも。
「気づくことはなにかを失うことだ」

 すこし抽象的な二編ほど。後者などはどこか禅っぽさがある。ブローティガンもダルマ・バムズの一員だったのかもしれない。いや、実際に禅に興味を持ったことはたしかなのだけれども。
 こんな調子(ってわかるかしらん)で、身近な人々のこと、小さな風景、出来事を淡々と描いていく。読み終えたときに、そんなに仰々しくないこぢんまりとした美術館を出たような気になる。ちょっとどこかに出かけた先で、ふと入ってみた小さな展覧会、そんな気持ち。
 とはいえ、訳された詩というものはいったいどんなものだろう。おれにはよくわからない。ただ、おれには英語がよくわからないのだから仕方ない。英語で書かれたブコウスキーの詩集も何冊か持っているが、詩というのは短く研ぎ澄まされているだけに、よけいにわからないところがある。とはいえ、おれは訳されたものであれなんであれブローティガンは好きだ。

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