アーシェラ・K・ル・グウィン『言の葉の樹』を読む

 なんとなくSFを読む季節だと思った。ル・グウィンの本書を手にとった。ル・グウィンは『闇の左手』しか読んだことがない。好みではないというのではない。その逆といっていい。「まだ読んでいないル・グウィンがある」という状態が好もしい。そういうレベルの作家だった……のではないだろうか。だったかな。
 本書は、過去の伝承、神話、語りが徹底的に排除される惑星アカを舞台としている。過去をひたすらに焚書し、科学技術の発展のみを望む社会。そこに、大宇宙連合(エクーメン)の観察員として地球出身のサティが訪れ、隠れ生き延びている語りの村へ……という。そもそもアカがそういった道を選んだのは、エクーメンとの接触があってのことで、それゆえに独裁企業体としての道を歩んでいる。観察者とはいえ、アカがその道を歩んだ責任の一旦でもある。その矛盾があって面白い。その中で展開される、星の歴史、語りの、文書の価値。
 SF……SFとしてはどうだろうか。これはときどき宇宙の大きさ、知的生命体の住む星が一つあって、そこに星の歴史と文化がある、その点をときどき意識しなければいけない。意識すると豊穣の心地になれるような気がする。この地球にだって数えきれない民俗、文化、歴史がある。ある星にもそれがある。そう考えるとわくわくする。おれのSFはいい気分になる。それを意識しないと、なにか西洋人が東洋文化に触れました、というような内容にも思えてくる。それはそれで悪くないが、おれはSFを求めていたのだ。とはいえ、ここに描かれた人間模様、さすがのもんだよ、と。
 とまあ、そんなんで、ちょくちょくSF読むか。夏だし。べつにオチもなにもねえし。そんじゃ。

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 ……ずいぶん前だなー。