オール・ユー・ニード・イズ・セル〜『ミッション:8ミニッツ』を観る

 主人公は列車が爆発するまでの8分間をループし、犯人を見つけなければならぬ。死んでリスタート、あいつが怪しい、バッド・エンド。こういう行動をしてみよう、バッド・エンド……。ループものである。しばらく前の作品だからネタバレもなかろうが、知らないほうが知らない人にとって知らない楽しみが残ると信じて詳しいことは書かぬ。書かぬが、こないだ映画館で観た『オール・ユー・ニード・イズ・キル』よりずいぶんと面白かったと思う。冒頭から出てくる街を見下ろす風景からしてたいへん美しい。そして、『キル』にはない人間感情の機微があって興味は尽きない(ちなみに本項タイトルのセルは携帯電話の意味というつもり)。SFとしての設定もおぞましく良い感じになっている。ラストはといえば、博士の作ったものがそれ以上のものだったのだろうか、『未来世紀ブラジル』なのだろうか、おれは前者をとりたいが。とはいえ、やはり、記憶とは当人が目にしたものに限られているわけであって、見知らなかったところの現実性というものには疑問符がつくか。いいや、多世界解釈というやつがそうなのだ、といえば、やはり博士は博士が考えている以上のものを作ったということだろう。いずれにせよ、SFとミステリーのよい出会いだった。あと、向こうの電車はロードを縦にして収納できる場所などあるのか、などと妙なところに関心を持ったりした。監督はダンカン・ジョーンズデヴィッド・ボウイの息子である。Wikipediaを見てみれば『ウォークラフト』というゲームの映画化をするらしい。『月に囚われた男』と本作からすると、かなり毛色が違う世界のように思えるが、どうなるのだろうか。以上。

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